ウインブルドンで旋風を巻き起こした15歳。コリ・ガウフとは何者か? (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第2セットも、相手のダブルフォルトに乗じて先にブレークした15歳は、凛とした表情を崩さず、静謐なまでの集中力を維持したまま、フィニッシュラインへと迫っていった。手にした3本のマッチポイントは女王の意地に阻まれるが、4度目のチャレンジで相手のショットがネットにかかる。

 その瞬間、両手で顔を覆い、その場にしゃがみこんだ勝者は、すぐさまネットへ駆け寄り握手を交わすと、握りしめた憧れの人の手を、しばらく離そうとはしなかった。

 金星の余韻に浸ることなく2回戦も快勝したガウフは、3回戦では相手が多用するスライスと遅いペースの打ち合いに戸惑いながらも、2本のマッチポイントをしのぎ、逆転勝利を掴み取る。

 その3日後――。テニスの聖地を舞台としたシンデレラ・ストーリーは、4回戦で元世界1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)に敗れることで、一旦の終止符が打たれた。

「彼女は、どこまでも上に行けると思うわ」

 ビーナスは、ガウフの未来に限界はないと言い、セリーナは「私からの助言なんて何もない。彼女はすでに正しい道を歩んでいる」と、明るい将来を予見した。

 新しい物が好きな周囲は、新星の出現に色めき立つ。だが、地に足をつける若きプロテニスプレーヤーは、自分の現在地を誰よりも理解しているようだ。

「私はまだ15歳。テニスを始めたのは6歳で、まだ自分のテニスを確立すらしていない。この先もっと努力をすれば、どれだけのことが成し遂げられるのか? そのことにワクワクしているの」

 彼女が、未来に対して抱く興奮――。それはこの先しばらく、テニス界全体が共有していく、胸の高鳴りだ。

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