大坂なおみ「セリーナ・スラム」達成へ。苦手クレーを楽しく感じた (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 実際に立つクレーコートは、想像していたよりもはるかにイレギュラーが多く、足もとの踏ん張りも効かない。赤土に対して抱いたのは、フラストレーションと苦手意識。しかし彼女は、「だからといって、クレーを避けるわけにはいかない。私はどのサーフェス(コートの種類)でもすばらしいプレーができる選手になりたいの」と、上達を自らに課した。

 グランドスラムの達成は、ハード、芝、そしてクレーの全サーフェスを制することでもある。「そのための最初の大きなステップは、クレーでのプレーや適応法を学ぶこと」。だから、彼女はクレーシーズンに挑む前に、ロサンゼルスで厳しいトレーニングに励んだという。

 その成果は、クレー開幕戦となるシュツットガルト大会で、早くも実感することができた。準々決勝のドナ・ベキッチ(クロアチア)戦は、最終セットのゲームカウント1−5と追い詰められた大坂が追いつき、6−3、4−6、7−6の大接戦でモノにした試合だ。

 だが、大坂がこの試合を「ここまでのクレーシーズンで最高の勝利」にあげた訳は、剣ヶ峰から逆転したことにあるのではない。「純粋にとてもいいプレーができた試合」であり、これまで苦しめられてきた赤土でのフットワークに大きな進化を感じることができたからだ。

「今まではボールを打った後に足もとが滑っていたが、最近は滑ってボールに追いつき、打つことができる」と感じ、スライディングしながら「これは楽しいぞ、と思えた」試合でもあった。

 今季の大坂が、クレー3大会で残した戦績は7勝3敗。その3敗のうち2つは、棄権により戦わずに喫したものだ。なお、過去3シーズンの彼女の赤土での勝敗は9勝10敗。これらは、今季の大坂がいかに「大きなステップ」を踏み出したかを象徴する数字である。

 クレー2大会目のマドリードで敗れた時、大坂はその最大の理由を「1位の地位がかかっていたこと」に求めた。その試合で勝てば、当面の1位を確定できる――。その重圧が、コート上で彼女の思考を混濁させたという。

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