2019.03.12

錦織圭は苛立ちの原因である
「複雑な数式」を解けるのか

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 第1セットを奪ったにもかかわらず、錦織圭の顔には時おり、苛立ちの陰が落ちていた。

 本来なら相手コートに刺さるはずのフォアハンドストロークが、力なく浮いていく。いつもならネットをかすめ鋭くコートを切り裂くバックが、ネットにかかり自分のコートへと落ちる……。ベンチに戻った時には、複数のラケットのストリング面を手で叩き、その反発力を確かめた。

インディアンウェルズの環境に苦しみながらも初戦を突破した錦織圭 ラケットに貼るストリングスのテンションと、ボールやサーフェスの特性、そして天候の組み合わせによって決まる打球感は、砂漠の街インディアンウェルズで開催されるBNPパリバ・オープンで、常に錦織を悩ませる複雑な数式だ。

 大会4日目のインディアンウェルズの週末は、朝から薄雲が上空を覆い、陽射しの届かぬコートは気温も上がらない。

「難しかったですね。天候によってボールの感じも変わるので」と、錦織は試合後に述懐する。

「今日は温度も低くて、なおのこと決められない環境になっていた。太陽が出ると、ボールもしっかり飛んでくれるんですが……。さらに、相手がフラット系で低いボールを打ってくるので、それもすごく攻めにくさを感じた理由でした」

 第2セットでは、相手のサーブの調子が上がってきたこともあり、なかなか突破口を見いだせない。ゲームカウント4-4で迎えた自分のサービスゲームでは、最後はスマッシュをミスしてブレークを許した。

 第2セットを落とし迎えた第3セットでも、フォアのショットが乱れる場面が目立つ。第3ゲームでブレークされ、試合終盤の第11ゲームでもブレークを許した。だが、いずれの局面でも、その直後のゲームで相手のアドリアン・マナリノ(フランス)がダブルフォルトを犯し、自らを苦しい立場に追い込んだ。

 全体の流れとしては劣勢ながら、相手のミスもあってなんとか食らいつく――。試合全体の展開としては、そのように映った。

 だが、同じ試合も、マナリノ側の視点に立つと、また異なる景色が見えてくる。