大坂なおみに笑顔が戻った。ジェンキンス新コーチの助言も効果大 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その「学んだこと」とは、主に「ポジティブな姿勢を保ち、相手に何も与えないこと」。そして、「確率の高いショット選択をすること」だったという。

 ドバイでの対戦時には、「エースか、ミスか」というリスクの高い選択を繰り返し、結果として敗戦に陥った。その同じ轍(てつ)を踏むまいと、この試合では高い確率でファーストサーブを入れ、その後の展開で打ち合いを支配する。第1セットを6-3で奪った直後には、2週間前に就任したばかりのジャーメイン・ジェンキンス新コーチをベンチに呼び寄せ、「外部の視線から見た意見」を求めた。

 そのコーチからの助言で大坂が覚えているのは、「重要な局面では、ライン際を狙い過ぎず、ボールをコート内に収めること」と、「ポジティブな姿勢を維持すること」。さらにコートサイドの集音マイクは、「試合前に話していた、サーブのスピードに変化をつけることはしっかりできている」というコーチの声を捕らえていた。それらはいずれも、まさに「前回の敗戦から学んだこと」である。

 この勝利は、大坂が世界1位になってから初めて得た白星だが、本人はそのような捉え方はまったくしなかったという。コートに立てば、思うことは「前回敗れた相手に勝ちたい」の一点のみ。練習コートに向かう時には、「たくさんの人が待っていて、とてもナーバスになった」彼女だが、センターコートに続く通路を歩く時には、落ち着き払っていたという。

 もしかしたら、今の彼女にとって試合のコートは、一番自分らしくいられる場所なのかもしれない。現にこの日の試合中も、チェンジオーバー時に流れる音楽に合わせ客席で踊る3人の子どもが、彼女の心を和ませた。試合終盤には、「ものすごく寒いから、早く試合を終わらせて!」と叫ぶ観客の声を耳にして、笑いをこらえるのに必死だったという。

「観客たちが試合に入り込み、楽しい時間を過ごしていると感じられた。それが私を、うれしい気分にさせてくれたの」

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