2018.06.02

ついに自分も楽しくなってきた錦織圭。
赤土でナダルに勝った男と激突

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 初めて当たる「タフでしつこい」地元フランス人選手との対戦は、結果的に、錦織圭を完全覚醒させる契機となったかもしれない。

「自分のテニスができた。ラリー戦をしっかり組み立てられた相手なので、たぶんそれがやりやすく、ストロークの調子も上がったのかなと思います」

 そう語る錦織の口調と表情は、冷静で穏やかなだけになおのこと、深まる自信と満足感を多く含んでいるようだった。

初対戦のジル・シモンをストレートで下した錦織圭 今大会のここまでの2試合、錦織は勝利を手にしながらも、どこか「自分のテニス」ができぬストレスを抱えてきた。

 初戦で当たったのはすべてのボールを強打する若武者。2回戦のブノワ・ペール(フランス)はセオリー度外視のトリッキーなプレーで、相手に心地よくプレーさせない名人。いずれの対戦相手も、錦織いわく「本当に早い展開が好き」であり、まともに打ち合いをさせてくれぬ曲者(くせもの)であった。

 その錦織が3回戦で対戦したのは、33歳のベテランのジル・シモン(フランス)。錦織とは同時期にトップ10にいたこともあったが、不思議とこれまで試合でネットを挟むことはなかった。

 端正な面立ちの細身なこのフランス人は、相手のパワーを活かすカウンターと、長い打ち合いを得意とする。巧みな打ち分けと配球の妙でミスを誘う戦略家でもあり、2年前の全豪オープンでは当時最強を誇ったノバク・ジョコビッチ(セルビア)から100本のエラーを引き出し、大接戦を演じてみせた。

 それだけに錦織も、対戦前には「あまり他にいないタイプの選手。ミスをさせたり、頭を使ってプレーしてくる選手なので、長い展開になると思います」と警戒心を深めていた。

 その錦織の覚悟どおり、試合は序盤から、互いの思惑と読みが交錯する長い打ち合いが繰り広げられる。第1ゲームこそサーブ好調の錦織が簡単にキープするが、続くシモンのサービスゲームは、いきなり23本のラリー戦で幕を明けた。