ツアー初優勝で、ダニエル太郎の「人生哲学」に変化はあったのか? (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

―― では、何が自分の評価の基準でしょう?

ダニエル やっぱり、いいテニス選手や、いい人間になるには何をしなくてはいけないかを自分で理解してから取り組んでいれば、うれしさや幸せは絶対にくると思います。

 勝った後の喜びって、ほんっとうに短いんです。サッカーやバスケだと、勝ったらチームメイトとも喜ぶ時間もあるけれど、テニスは勝ってもすぐに試合があるし、勝った試合後もすぐに記者会見などありますから。勝ったら、綺麗な女の人がバーッと寄ってきて遊べるというわけではないし(笑)。だから、勝った瞬間だけに集中してしまうと、本当に苦しいキャリアになると思います。

―― そのような考え方って、いつごろからできるようになったんですか?

ダニエル いつもそうだったと思うけれど、リオ・オリンピックに行ったときに一番感じました。日本のアスリートが......つらそうな顔をしている人ばっかりで......。

 もちろん、テニス選手にとってのオリンピックはボーナスのような大会なので、他の競技の人と比べたらプレッシャーは低いです。それでも、柔道や水泳の人たちの『メダルを取らなくちゃ』という雰囲気が苦しそうで。

 あとレスリングの吉田沙保里さんの、金メダル取れなかった後の『ごめんなさい』とか、卓球の(福原)愛ちゃんの『オリンピック終わってよかった。終わるまでは苦しい道でした』と言っているのを聞いて、そんな苦しい経験になるなんて......というのが。あれが僕の精神的なターニングポイントでした。

―― でも、ダニエルさんもそのオリンピックの後に勝てない時期が続いたり、モチベーションが下がって、苦しかったと言っていましたよね?

ダニエル 人生はそんなものなので。たとえば僕が30位や40位......今の(杉田)祐一君のポジションになったとしたら、『そこまで行けば、精神的に楽になるのかな』と周りは想像すると思います。でも、祐一君はクレーシーズンに入ってから勝ててなくて、たぶん今の彼は不安だと思います。

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