2018.05.19

ジョコビッチに負けたけど…。
錦織圭の落胆は「勝てたはず」の裏返し

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の勇壮なテーマ曲が流れるなか、まず錦織圭がコートに踏み出し、次いでノバク・ジョコビッチ(セルビア)がセンターコートに姿を現すと、客席から大歓声が沸き起こった。その声に応じるジョコビッチの手には、すでに臨戦態勢であることを示すように、今季から新たに使い始めたラケットが握られている。昨年末に約6ヵ月コートを離れ、復帰した今季もここまで9勝6敗と苦しむも、4度頂点に輝いたこの地でのジョコビッチの人気は絶大だ。

ジョコビッチに逆転負けを喫してうなだれる錦織圭 過去2勝12敗と大きく負け越すジョコビッチと対戦するとき、錦織は「他の選手とは違った感情になる」のだと告白した。それに加え、会場のこの雰囲気だ。ともすれば飲み込まれかねないが、彼は「そんなに意識はしてなかった。思いっきりプレーをするだけなので」と後に語っている。

 その言葉が事実であることは、試合開始早々のプレーが物語った。フォア、バックともに錦織のショットは深く鋭くジョコビッチのコートに刺さる。立ち上がりのジョコビッチのゲームを、いきなり錦織がブレーク。抑えが効かないようにラインを割るジョコビッチの打球が、ショットの質で錦織が勝(まさ)っていることを示していた。

 ジョコビッチの策を錦織が凌駕した顕著な例が、第4ゲームでの2本のウイナーである。

 ジョコビッチがオープンコートに放ったバックの強打に、錦織はサイドステップで飛びつくと、ストレートへと豪快に叩き込んだ。続くポイントでも、バックのクロスの打ち合いからストレートへと切り返し、最後はバックの逆クロスでまたもウイナー。この2本で流れを強く引き寄せた錦織が、次のゲームもブレークする。第1セットは、錦織が36分で奪い取った。

 完璧とも言える錦織のプレーに加え、今季のジョコビッチは、まだフルセットでの勝利がない。それだけに精神的に切迫するかと思われたが、圧倒的に優位に立つ過去の実績がそうさせるのか、第2セットでのジョコビッチは、確実にプレーのレベルを上げてきた。