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錦織圭、「ケガの先輩」に完敗して、
むしろ復活へポジティブな手応え (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 錦織にはミスが増え、デル・ポトロはますます硬軟織り交ぜた多彩な攻めを見せる。第2セット最終ゲームの最初のポイントで、ドロップショットからパッシングショットにつなげたデル・ポトロのプレーは、この日の試合を象徴するようだった。

「ファーストセットはすごくチャンスがありながら......。いいプレーが出だしはできていたが、小さな自信や安定感だったり、そのあたりに足りていないところがあるので、持続できなかったです」

 少しの勇気や試合勘の欠如、さらに風邪のため1週間練習ができなかったこと......それら細かい複合的要因が、「持続できなかった」背後にあると錦織は見る。

 対して勝者は、この試合で効果的に決めたドロップショットは「試合前のプラン」だと言った。

「あらゆるショットを使って、彼(錦織)を走らせることを考えていた。うまくできたと思う」

 人柄がにじみ出る朴訥(ぼくとつ)な口調で語るデル・ポトロは、こうも続けた。

「圭はまだ、パワーを取り戻している途中だと思う。でも、彼は復帰への正しい道を歩んでいる。以前のようないい試合をするには、もう少し時間が必要なんだと思う」

 さらに彼は、自身もまだ左手首のケガからの復帰過程にあること、そしてケガは必ずしも負の側面ばかりではないと説明する。

「今でも毎日、2~3時間は治療を受けなくてはいけない。僕がテニスを続けたければ、そうするしかないんだ。でも、僕のバックハンドはどんどん上達している。スライスやドロップショットなどを使い、緩急をつけられるようになった。それは今後に向けて、とてもいいサインだと思う」

 デル・ポトロと同様に、錦織も手首のケガをプレー改善への足がかりにしようとするひとり。その最たるものがサーブで、「(手首に)負担がかからないようにしたいので、その意味ではよくなっています。今のフォームに変えてから打ちやすくもなった」と、好感触を得ているようだ。

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