2018.03.23

大坂なおみ、喜びと寂しさと…。
憧れのセリーナを倒して胸に抱く想い

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 インディアンウェルズでツアー初優勝の歓喜に浸った、その数時間後……。次の戦地マイアミに向け旅立つ直前に、まるでご褒美のような吉報が、彼女のもとへと飛び込んできた。

 マイアミ・オープンの初戦の相手が、セリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)に決まった――。

試合後に握手する大坂なおみ(左)とセリーナ・ウィリアムズ(右) そのとき、彼女は飛び上がらんばかりに喜んで、周囲の人たちを驚かせたという。

 母親に電話をかけ、「マイアミで誰と戦うと思う? セリーナよ!」と興奮の面持ちで報告した。そんな彼女の姿に「衝撃を受けた」のは、ほかでもないコーチのサーシャ・バジンである。

 セリーナのヒッティングパートナーを8年務めたかつての”相棒”は、「セリーナと対戦すると知って、こんなに喜ぶ人を見たのは初めてだよ! 彼女だけでなく、母親までも興奮している。『どうなっているんだ、この人たちは!?』って」と苦笑する。

「普通の選手はうなだれるところ。僕だって、セリーナが相手と知って『大変なことになったな』と思ったのに……」

 そんな周囲の心労をよそに、大坂なおみは、ただただ興奮と感激の最中にいた。

「夢が叶った!」

 セリーナとの対戦を知ったとき、それが何にも増して彼女の心を占めた想いだった。

 マイアミのセンターコートは8度の優勝を誇る「セリーナの城」で、観客の大半は彼女の信奉者だ。漆黒のウェアに身を包んだセリーナがコートに姿を現すと、一斉に大歓声が湧き上がった。

 試合開始前にネットを挟み向き合ったときには、軽くジャンプする大坂の前で、セリーナはまるで威嚇(いかく)するようにラケットを四方に振り回す。両者、肩を並べての記念撮影は、セリーナが一瞬で踵(きびす)を返してベースラインに向かったため、1秒にも満たずに打ち切られた。

 ウォームアップが終わり、主審の「タイム」のコールとともに大音量の音楽が止まると、セリーナがサーブを打つべく、ベースラインに立ち構える。その瞬間、コート上の空気がピンと切れそうなほどに張り詰めた。