大坂なおみ、世界1位を撃破した瞬間に
ラケットを投げなかった理由 (3ページ目)
「勝ったら、ちょっとは泣いたりするかなと思ったけれど、実際にはそうはならなかった。試合が終わったことへの安堵のほうが大きかったから。ようやく勝った実感が湧いたときには、もうラケットを投げるには遅すぎたし」
それに......と、真摯な口調で彼女は続けた。
「喜びすぎるのは、相手に対して失礼になると思ったの」
世界1位に敬意を表する謙虚な決勝進出者は、さらなる上を目指す覚悟を、次の言葉にも込めた。
「It's not over」
大会は終わっていない――。
今はまだ、喜びに浸るときではない。ラケットを投げて流す歓喜の涙は、優勝の瞬間まで取っておく。
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