2018.03.14

ジョコビッチに激勝! 日本を拠点にした
ダニエル太郎の「いい兆候」

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 父親はアメリカ人、母親は日本人で、ニューヨーク生まれの日本とスペイン育ちという、カラフルな国際色の生い立ちゆえだろうか。あるいは、レッド・ツェッペリンやウディ・アレンをはじめとする1970年代の音楽や映画、書籍を好む、博覧強記(はくらんきょうき)のためだろうか。

ジョコビッチに勝った瞬間、ラケットを落としてしゃがみ込むダニエル太郎 ダニエル太郎はよく考え、よく悩み、そしてそれらを独自の言葉で表現できるアスリートである。

「冷静に、結果を待てていなかった」

 3月8日にインディアンウェルズ・マスターズが開幕したとき、ダニエルはこの数ヵ月間の葛藤の日々を、そのように振り返った。

 14歳から住むスペインのアカデミーを離れ、日本へと拠点を移したのが昨年の9月。少年時代から師事したコーチとの関係性が、25歳を迎えた今も「父と子ども」のようであることに嫌気がさしたための決断だった。

 日本に戻ってからのダニエルはさっそく、自分のテニスの模索に取り組み始める。

「自分で試さないと楽しくない。プレースタイルもひとつに固定されるとつまらない」と、試行錯誤のプロセスにも楽しみを見出していた。フォアハンドとサーブのフォームを変え、それにともないプレースタイルも、以前よりも速い展開で自ら仕掛ける攻撃的テニスを指向する。実際にその成果は、練習では確実に出ていると感じることもできていた。

 だが、今季は3月を迎えた時点で、上位選手相手に善戦するも、実際に得た勝ち星はわずかふたつ。それも、いずれも自分よりはるかに下位の選手から得たものだ。

「ここ数ヵ月は試合中に、『また負けちゃうんだな』というネガティブなものが頭の後ろからにょろにょろ生えてきた」

「ネガティブな思いがよぎったとき、それが雲みたいにパーッと風に乗って流れていくときと、そこで暗くなって雷が落ちてくるときがある」


 端正な顔の口もとを少しゆがめ、ダニエルはこの数ヵ月間味わってきた苦い胸中を言葉にした。