大坂なおみ、20歳の親離れ。
セリーナを支えた新コーチと世界1位へ (2ページ目)
3年前にビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、そして昨年はキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)のヒッティングパートナーを歴任したサーシャ・バジンは、大坂を最初に見たときの印象を振り返った。
そのシャイな才能の原石と、キャリアアップを望んでいた33歳の「若き優勝請負人」を結びつけたのは、大坂のエージェントのスチュアート・ドゥグッドである。それまで常に父親をかたわらにつけていた大坂に、ドゥグッドは「ツアーに帯同してくれるプロのコーチを雇うべきだ」と説いた。
昨年10月に20歳を迎え、ツアーレベルに定着して3年目を迎える大坂にとって、今年は成熟した選手になるための「親離れのとき」だったかもしれない。先の全豪オープンが開幕したとき、その前週のホップマンカップ(国別対抗のエキシビション大会)にいた父親の姿は、メルボルンにはなかった。
「変化」をもたらすべく選ばれた新コーチは、昨年末に初めて練習したときに即、彼女が抱える課題に気がついたという。
「彼女は『自分を褒めようとしない性格』だとわかりました。たとえば練習中に僕が何かを助言すると、すぐにそれを試みます。そしてうまくいかないと、自分を責める。ボディランゲージから、彼女は自分に厳しすぎると感じました。そのような姿勢が必要で、うまくいくこともあります。でも、今のナオミに必要なのは、もっとリラックスすることだと思いました」
だからこそバジンは、「なんでもすぐにうまくいくはずがない。君はマシンではないのだから」と大坂に言い聞かせる。
同時に彼は、大坂が抱く自分への苛立ちの源泉には、「完璧」を求める高い向上心があることにも気づいていた。それは過去に大坂が、周囲から「完璧なんてありえない」と否定されたこともある考え方だ。ところが新コーチは、ネガティブな姿勢は正すべきとしながらも、完璧主義は全面的に肯定した。
「パーフェクトを追うのはすばらしい姿勢だし、セリーナやビカ(アザレンカ)ら僕が見てきた女王たちは、みんな完璧主義者でした。大切なのは、自分を成長させるために、それをどう用いるかです」
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