ツイッターをやめたら嫉妬も消えた。日比野菜緒の有意義な準優勝 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「無心に勝(まさ)るものはないですね......」

 ふっと笑って、彼女が言う。それは、挑戦者の特権的な勢いで初優勝へと駆け上がった、2年前の心境を指しての言葉だった。

 だが、脇目も振らず表舞台へと駆け上がったその後に、「無心」を妨げる因子はコート外にも蜘蛛の巣のように張られていた。SNSも、そのひとつ。知名度の上昇に伴い、ツイッターやインスタグラム上で増えた書き込みには、心ない言葉も混じるようになる。

「ランキングと実力が見合ってない」
「レベルの低い大会でポイントを稼いでるだけじゃん」

 そんな雑言のひとつひとつに、生真面目に向き合っては「なんでわたし、こんなに嫌われるんだろう」と心を痛めた。

 少女時代からのライバルである同世代たちの活躍も、時に彼女の心をかき乱す。

 日比野の同期には、小学生のころからタイトルを総ナメにしてきた尾崎里紗や、ダブルスで活躍する穂積や加藤未唯らが顔を揃える。同期の活躍は、もちろん日比野にとっても刺激になる。だが同時に、胸に湧き上がる嫉妬や焦燥を抑えることは難しかった。それらは、自身の急激な発達により生まれる「成長痛」に似た苦しみだったかもしれない。

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