「フェデラー王」のご帰還だ。今季19勝1敗、35歳の情熱は枯れない (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 僕たちはみんな、彼に負けることにある意味で慣れている。でも、僕は彼に勝ったこともある。その試合を振り返り、何がうまくいっていたのか......そして今回は何がダメで、何を改善できるかを確認していく。

 彼のプレーのリズムは、とても速い。それが、僕のテニスを狂わせる。だが、彼との対戦は僕にとって、いつだってチャレンジなんだ」

 そのインディアンウェルズ決勝から約2週間後。マイアミ・オープン準決勝でフェデラーと対戦した21歳のニック・キリオス(オーストラリア)は、相手にすべての声援が向けられ、自らには不条理とも思えるブーイングが容赦なく浴びせられるなか、6-7、7-6、6-7の大接戦の末に敗れた。試合中、荒ぶる感情を必死に制御し続けた「悪童」と呼ばれる次代の旗手は、敗北と同時にすべての怒りを吐き出すようにラケットを叩きつけ、会見では焦点の定まらぬ目のまま椅子に腰を沈めていた。

「もう少しだった......。自分には勝機があった。もう少し彼にプレッシャーをかけられていれば......」

 悄然としながら胸のうちをポツリポツリと吐き出す敗者は、フェデラーの強さも素直に称賛する。

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