「フェデラー王」のご帰還だ。今季19勝1敗、35歳の情熱は枯れない

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 降り注ぐ陽光をきらめかせ、2度掲げたふたつのトロフィーは彼にとって3度目の、そして実に11年ぶりの「サンシャイン・ダブル」の勲章であった――。

全豪オープンに続き、シーズン序盤のマスターズも次々と制したフェデラー全豪オープンに続き、シーズン序盤のマスターズも次々と制したフェデラー カリフォルニア州のインディアンウェルズと、フロリダ州のマイアミで行なわれるマスターズ2大会を制することを、北米の人々はある種の誇りと敬意を込めて「サンシャイン・ダブル」と呼ぶ。まばゆい太陽が輝くふたつの地で、すでに18のグランドスラムタイトルを誇る35歳のロジャー・フェデラー(スイス)は、他の選手を畏怖(いふ)させる超攻撃型のプレースタイルを引っ提げ、「王の帰還」を思わせる頂点奪回を成したのだった。

 フェデラーが最後にインディアンウェルズとマイアミ・マスターズを制したのは、"ひと昔"以上の歳月をさかのぼる2006年のことである。その前年にも同じ栄冠を手にした彼は、まさに最強の時を謳歌していた。

 しかし2007年には、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が19歳にしてマイアミ初戴冠。そのジョコビッチの背にピタリと鼻先をつけるように追走するアンディ・マリー(イギリス)も、2009年に同大会を制する。若く、野心に燃え、さらにはフェデラーという圧倒的な王者を倒すためにカウンターを主体とした精密機械のごときプレースタイルを確立した新世代を指し、当時のフェデラーは「僕は"モンスター"を生み出してしまったのかもしれない......」とうなだれたこともあった。

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