ラオニッチが悪童マッケンローから学んだ「対戦相手の嫌がること」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 ラオニッチがモヤに加えて、マッケンローまでもコーチとして招聘するとのニュースが流れたとき、「3人コーチの体制がチームとして機能するのか?」との疑問が当然のように持ち上がった。だが、それら周囲の声に、ラオニッチは次のように応じている。

「すべてのコーチたちは、僕にアドバイスをくれる存在である。そして彼らの言葉に耳を傾け、どの意見を採用し、何が自分にとってもっとも必要かを判断していくのは、僕の仕事だ」

 簡潔かつ明瞭に語る彼は、人を説き伏せるかのような口調で、こう続けた。

「"ミロシュ・ラオニッチのテニス"のCEOは、この僕だ」。

 その言葉と信念が正しいことを、彼はコート上で証明する。ウインブルドンでも決勝まで勝ち上がったラオニッチの成長は、以前よりはるかに精度も回数も増したネットプレーに、はっきり表れていたからだ。

 ラオニッチに、「もっとネットに出ていくように」と真っ先に指示したのは、昨年末にコーチに就任したモヤだった。その新スタイルに磨きをかけたのが、ボレーの名手のマッケンローである。

 現役時代に"悪童"の異名をとったマッケンローと、優等生然としたラオニッチとでは一見、人間性が大きく異なるように映る。だが、ラオニッチは両者の差異を認めたうえで、「僕たちは似た点も多い」と言った。

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