錦織圭とジョコビッチ、2人が語る「勝者と敗者を分けたもの」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

 対する錦織は、マドリードで手にした攻略のカギで、固く閉ざされたジョコビッチの守備をこじ開けにいく。鋭いスピンをかけたフォアの逆クロスで相手をコート片隅へ押し込むや、低く刺さる強打をオープンコートへと放つ。あるいは、ヒートアップした打ち合いに突如水をかけるように、柔らかなドロップショットをネット際へと滑り込ませる。

「第1セットの彼は、完璧だった」
「攻撃だけではなく、守備もよく、チャンスが訪れるのを待っていた」

 絶対王者が、脱帽する。

「自分が攻めてポイントを取っていたので、そこが一番よかったところ」。試合前に掲げていた策を完遂した錦織が、第1セットを奪った。

 しかし、第2セットに入ると、ジョコビッチの動きは明らかに切れを増す。

「相手のプレーが徐々によくなったので、少し引いてしまった」と悔いる錦織に対し、ジョコビッチは、「第2セットに入ったころから、時おりラリーのなかで圭のボールが浅くなることがあった」と感じたという。

 だからこそ第2セットの中盤で、ジョコビッチは勝負に出た。ベースライン上に踏みとどまり、サービスライン手前に刺さる鋭角のクロスのショットで、錦織に主導権を与えなかった。

 第10ゲームをブレークしたジョコビッチが、第2セットを奪い返した。

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