錦織圭がドーピングを語る。「最悪なのはトイレに行った瞬間」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 テニスにおける2016年のウェアアバウツ・プログラムでは、選手たちには参戦する大会予定以外に、以下の報告が義務づけられている。

・向こう3ヶ月分の、毎日の滞在先(自宅やホテルなど)の名前と住所
・トレーニング場所や職場・学校などに行っている場合は、その施設の名前と住所、そこにいる時間帯
・5時〜23時の間で、ドーピングテストを受けることが可能な時間帯

 錦織の場合は、検査官の訪問を受けるのは「年間5〜6回」。確実に家にいるであろう朝6時から7時の間を「テストを受けることが可能な時間」として指定しているので、その時間帯に自宅のチャイムが鳴ると、「来たか」と直感する。最悪なのは、検査官が訪れたタイミングがたまたま、「トイレに行った瞬間」だった場合。そのときは検査官に監視されながら、「水をがぶ飲みですね」ということになる。

 このようなドーピングテストの厳しさに関しては、他の選手たちの口からも多くの証言が語られる。ある選手などは、電車に乗るために家を出たまさにそのタイミングで検査官の訪問を受け、そのまま乗った特急電車のトイレでサンプル採取にいたったというほどだ。

 また、これら抜き打ちテスト以外に選手たちは参戦した大会でも、かなりの高確率で検査を受けている。錦織は、「ほとんどのグランドスラムとマスターズ大会」でチェックを受けたと言い、昨年ランキングを急上昇させた女子のベリンダ・ベンチッチ(スイス)は、「ほぼすべての大会」が対象になったという。検査を受ける頻度の高さと、抜き打ち検査官の厳格さを知るトップ選手たちほど、そのリスクの高さを実感し、だからこそ、選手が自発的にドーピングに走ることはないと感じるようだ。

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