本命不在の女子テニス界。日本人選手もトップを狙える! (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 人口5万人ほどの千葉県山武郡大網白里町(現在:大網白里市)で生まれ育った土居は、「田舎育ちで周囲にすごい子がいたわけでもなく、子どものころはプロなんて考えていなかった」と少女時代を振り返る。後にダブルスを組む奈良のことも、「雲の上の存在。プロを目指しているすごい人」と仰ぎ見ていたほどだった。

 土居より3歳年少の日比野もまた、土居と同様に、常に3~4番手に留まっていた選手である。同期に名を連ねるのは、2011年・全豪オープンジュニアのダブルスで準優勝した穂積絵莉(215位)と加藤未唯(171位)や、翌年の同大会でシングルス・ベスト8入りした尾崎里紗(133位)だ。

 そのライバルたちがナショナル強化選手に選ばれるかたわらで、日比野は「ナショナル選手とそれ以外は、同じ遠征に行っても、きっちり間に線を引かれている」と感じていた。独自の伝手(つて)を頼ってオーストラリアにテニス留学するも、プロか進学かで迷う。テニスの道を即決できなかった背景には、「同期と比べれば、私は2軍だ......」という、"逃げ"に似た想いもあったようだ。

 だが、母親の「そんなふうに思うなら、一度日本に帰ってきて、彼女たちと勝負したらいいじゃない」の言葉に背を押され、帰国してプロに転向。その後も、尾崎や穂積らの後塵を拝し、悶々とした時期を過ごしたが、昨年4月にふたたび母親から「この1年で成長がないなら、やめなさい!」と活(かつ)を入れられた。その母のゲキに背筋がピンと伸びただろうか、他者のアドバイスを素直に聞き入れ、「最後まで試合を捨てないこと」を心がけてコートに立ち、海外遠征で経験と自信を重ねながら、彼女は昨年、一気に飛躍の時を迎えた。

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