ベテラン勢の支配が続く男子テニス。「世代交代の機」はいつだ? (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by AFLO

 新ビッグ4――。今年の全仏オープンごろから、このような言葉がプレスルームやメディア上で再三見られるようになった。だがそれは、従来のビッグ4の中核を成すラファエル・ナダル(スペイン)が、今季は一度もグランドスラムでベスト8より先に進めなかったことに由来する。

 昨年末に彼を苦しめた虫垂炎、そしてもはや慢性化しているひざの古傷による長期離脱以来、ナダルはかつての輝きを取り戻せずにいる。「自信の喪失」「試合中のメンタリティの維持」。ナダルは自らの問題点としてこれら精神的な側面を列挙し、フィジカル面の衰えは否定した。もっとも、数年前のフェデラーしかり、昨年のマリーしかり、わずか1シーズンの成績により、彼ら超一流アスリートのその後を占うのはナンセンスだ。はたしてナダルがどこに向かうのか……その真価が問われるのは、ここから先の1年だろう。

 その五里霧中のナダルに代わり、「新ビッグ4」に名乗りを上げたのが30歳のワウリンカという点にこそ、昨今のテニス界の趨勢(すうせい)が色濃く映し出される。さらに、新ビッグ4以外のグランドスラム・ベスト4進出者を見てみても、30歳のトマーシュ・ベルディハ(チェコ)、30歳のジョー=ウィルフリード・ツォンガ(フランス)、そして29歳のリシャール・ガスケ(フランス)とベテラン勢の名が並ぶ。数年前より叫ばれて久しい「世代交代の機」は、いまだ訪れていないのが現状だ。

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