ウインブルドンの芝に変化?錦織圭との相性はいかに

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

 ウインブルドンが、他のどの大会にもまして活躍したい大会――。かつては多くの日本人選手が、そう口をそろえたものだった。クルム伊達公子も、「子どものころは、ウインブルドンくらいしかテニスの大会を知らなかった」と言っていたほど。そのクルム伊達と同世代で、現在はテレビ解説者や指導者として活動する神尾米氏も、「テニス=ウインブルドン。ウインブルドンで1勝すれば、胸を張って日本に帰れると思っていた」と、テニスの聖地への熱い想いを口にした。

昨年のウインブルドンは4回戦で敗退。今年はどこまで勝ち進めるか昨年のウインブルドンは4回戦で敗退。今年はどこまで勝ち進めるか 日本においてはNHKが1987年から中継をしていたことも、同大会の圧倒的な人気と知名度の一端を担っているだろう。もちろん、130年以上の歴史を誇り、その鮮やかな緑の芝に英国の伝統ある階級社会や格式をしのばせるこの大会は、今なお世界中の選手が「最も優勝したいトーナメント」に名を挙げるほどの威光を放っている。

 錦織圭にとって、ウインブルドンとはどのような大会だろうか? 彼も、『テニスの聖地』に特別な想いを抱いているのだろうか?

 数年前、錦織本人にそのような問いを向けたとき、帰ってきた答えは、「フェデラーですね」。予想していなかったこの返答に思わず真意を掴みかねたが、錦織の言葉は、こう続く。

「とにかくフェデラーが強い、フェデラーが勝っている大会という印象が強いです」

 そういう意味だったのか、と合点がいく。さらには、錦織が抱く「ウインブルドン=フェデラー」のインパクトは、聖地におけるロジャー・フェデラー(スイス)の戦績と錦織のテニスキャリアを重ね合わせたとき、より深い趣(おもむき)を感じるものがある。

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