クルム伊達公子の動揺。「その日が確実に近づいている」 (2ページ目)

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

 もし、全豪本戦に入れていなかった場合、予選にトライしていたかどうかは、クルム伊達自身にも、実際にその状況に置かれなければわからなかった。

 15年シーズンが開幕してから、クルム伊達はWTAブリスベン大会とシドニー大会に出場し、いずれも予選2回戦で敗れた。その後、メルボルン入りした彼女の気持ちの整理はついていなかった。

ケガの不安を抱えながらクルム伊達の戦いは続くケガの不安を抱えながらクルム伊達の戦いは続く「今は、試合がどうこうというよりも、ちょっと先が見えないですね。体がもうついていかない日が、1月に入ってからずっとなので。(その原因が)年齢なのか、ケガなのか、気持ちなのか。ここ数日、コートに立つべきなのかどうか、考えた。テニスがどうこうという以前の問題かなと思います」

 涙を見せた会見翌日、クルム伊達はケーシー・デラクアと組んだダブルスをプレーした。

「ダブルスは、かろうじてまだ楽しめている範囲に、ぎりぎりいられるので、体力的には今までよりもだいぶきついけど、ダブルスも気持ちをもってやりたい」

 1回戦は相手ペアに第1セットを取られ、第2セットも0-5に。しかし、マッチポイントを2回握られながらも、ここから大逆転勝ちを収めた。

「体はしんどいですよ。本当にずっと。今歩くのもしんどい。昨日(シングルス1回戦の日)からは大転子もちょっと張ってきているので、爆弾を抱えている。それが大きな要因として響いているのかわからないですけど、今までに感じたことがないだるさがある」

 結局、クルム伊達はダブルスも2回戦で敗れ、15年全豪の戦いが終わった。メルボルンでは最後まで満足できるテニスをすることはできなかった。

「トップじゃない私は、負ける回数の方が多いわけで、ひきずっていてもダメだし、立ち止まっていてもダメだし、現状を受け止めないこともダメ。タフなスポーツです」

 クルム伊達が、08年に37歳で現役再チャレンジをスタートさせ、09年から7年連続で全豪の本戦でプレーできたことは、あらためて驚異的な事実であることを認識すべきだろう。

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