クルム伊達公子の動揺。「その日が確実に近づいている」

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi photo by Ko Hitoshi

「1カ月半ぐらいですかね、テニスもできない、トレーニングもできない、歩くこともできないという日があって......」

 2015年オーストラリアンオープン(全豪)の女子シングルス1回戦の試合後。会見でこう語り、みるみるうちに目が真っ赤になったクルム伊達公子は、言葉を詰まらせ、両手を合わせて目頭を押さえながら静かに泣いた――。

試合後の会見で涙を見せたクルム伊達公子試合後の会見で涙を見せたクルム伊達公子 クルム伊達(WTAランキング101位、大会時)は、44歳114日の大会最年長選手として、2015年全豪の本戦入りを果たした。1回戦でのクルム伊達は、持ち味であるカウンターショットにキレがなく、終始厳しい表情のままプレー。予選勝ち上がりのアンナ・タチシビリ(141位・アメリカ)に、5-7、4-6で敗れ、昨年同様、初戦突破はならなかった。

「ケガが関係しているかどうかという判断は、自分の中でも難しい。完治しているわけではないので、もしかしたらずっとこのままの状態かもしれないし、治るのかもしれないし、わからない」

 クルム伊達は、14年9月、東レパン・パシフィックテニス1回戦でビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)との試合中に、左足の付け根を負傷。痛みはすぐにひいたが、試合後のMRI検査で、右側大転子の滑液包炎と診断された。9月末には、左尻と右側の大転子にステロイド注射をして治療。予定していた北京と大阪の大会を欠場し、回復に努めた。だが、炎症は思うように治まらなかった。

「もうコートに戻ることは無理かなと思っていた時期もあった」

 こう振り返ったクルム伊達のランキングは、一時116位まで落ちた。その後、完治はしていなかったが、11月のWTAチャレンジャー台北大会で復帰(1回戦負け)。続くITFドバイ大会では準優勝、ITF豊田大会ではベスト4に入ってランキングを89位まで戻し、期限ギリギリで全豪の本戦にすべり込んだ。

「私の中では、とくに全豪の本戦を目的にした試合ではなかった。ただ、自分の中で、その場にある状況と、ただ向き合って、勝負をしていただけ」

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