過去7戦全敗。錦織圭がナダルに勝つための条件 (2ページ目)

  • 山口奈緒美●文 text by Yamaguchi Naomi
  • photo by Getty Images

 その翌月には、4年半もトップに君臨していたフェデラーから王座を奪った。以降、フェデラーとしのぎを削りながら、2009年に全豪オープン、2010年には全米オープンも制したナダル。2009年の全仏オープン初優勝で決めたフェデラーに続いて、通算グランドスラムを達成した。ちなみにナダルは、2008年北京五輪でフェデラーがシングルスでは手にしていない五輪の金メダルも獲得している。

 フェデラーに追いつき、フェデラーを追い越しても、ナダルの目にはいつも前を走るフェデラーが映っていた。事実、練習中のフェデラーを、まるで熱烈なファンのように、いつまでも見つめていたナダルの姿を目撃したことがある。そしてナダル自身、以前こう語っていた。

「僕は、ロジャーのように完成されたプレイヤーじゃない。ロジャーにまだ伸びる余地があるなら、僕にはもっとある。ロジャーがまだ練習するなら、僕はもっと練習しなくてはいけない」

 ナダルが獲ったグランドスラムのタイトルは、14個。史上最多となるフェデラーの17個には及ばないものの、フェデラーとの5歳の年齢差を考えれば、史上最多記録の更新は確実、とも言われている。

 だが、凄まじい気力が肉体の限界を超えてしまうのだろうか、その道をしばしば阻むのが故障だ。自らのキャリアにおいて、グランドスラムは一度も欠場したことがないフェデラーとノバク・ジョコビッチ(27歳。セルビア/世界ランキング1位)に対し、ナダルは過去3年間だけでも、全米オープンで2回、全豪オープンで1回、欠場している。

「テニスは永遠には続けられない。だから、試合に出られないと、限りあるキャリアの、とても大事な時間を失っているように感じるよ。でも、その時間だって、僕のキャリアの一部なんだ。アクシデントは、どうしても起こる。ならば、どんな状況も受け入れて、その時々に違うことを楽しむんだ」

 それが、故障の度に不屈の精神で這い上がってきたナダルの心の境地であるが、昨年もケガや病気で多くの勝利の機会を逃した。ウインブルドンの4回戦で敗れたあと、右手首のケガで戦列を離れた。秋になって復帰したかと思えば、虫垂炎にかかってシーズン最後のマスターズ()であるパリ大会と、ツアーファイナルを欠場した。
※ATPワールドツアー・マスターズ1000。四大大会とツアーファイナルに次ぐ規模の大きな大会。年間9大会行なわれている。

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