グランドスラム狙う錦織圭。最大の壁は「新生」ジョコビッチ
1月特集 2015年錦織圭の挑戦!(6)
錦織圭vs「BIG3」
第1回:ノバク・ジョコビッチ編
昨年、全米オープンでファイナル進出を果たすなど、大いなる飛躍を果たした錦織圭。2015年、期待されるのは、日本人選手初のグランドスラム大会での優勝だ。しかしそれは、決して簡単なことではない。とりわけ「BIG3」と称される、世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ、2位のロジャー・フェデラー、3位のラファエル・ナダルの壁は厚い。はたして、錦織は彼らを打ち破って頂点に立つことができるのか。まずは、世界ナンバー1プレイヤーのジョコビッチの強さと現状に迫る――。
安定感抜群のジョコビッチ。昨年はツアーファイナル3連覇を達成した。 今の男子テニス界には、四大大会(全豪、全仏、ウインブルドン、全米)のタイトルをすべて手にしている『グランドスラマー』がふたりいる。グランドスラム17回優勝のロジャー・フェデラー(33歳。スイス/世界ランキング2位)と、同14回優勝のラファエル・ナダル(28歳。スペイン/世界ランキング3位)だ。しかし、世界ランクの頂点に君臨しているのは、このふたりではない。
ノバク・ジョコビッチ(27歳。セルビア/世界ランキング1位)――彼がナダルから初めて王座を奪ったのは、2011年7月。以来、フェデラーやナダルと入れ替わった時期もあったが、現在に至るまでツアーの"主役"に君臨している。
2008年の全豪オープン初優勝以来、グランドスラムで計7度の優勝を誇るジョコビッチだが、テニスファン以外には日本であまり認知されていなかった。理由は明らかで、日本で一度もプレイしたことがないからだ。
歴代のナンバー1プレイヤーで、日本でプレイしていない選手は、このジョコビッチだけではないだろうか。1990年代初頭、日本のバブルが崩壊すると、その後アジアでは中国が台頭。それによって、テニスツアーの構造も徐々に変化し、日本はアジアの中心から離れてしまい、トッププレイヤーが必ずプレイする環境ではなくなった。ジョコビッチは、そんな新時代の申し子だ。
セルビア生まれのジョコビッチは、政治的混乱を逃れてドイツにテニス留学した。努力家で、常に目標を持ってプレイしてきた優等生だ。ドイツの同じクラブに留学していた同年代のエルネスツ・グルビス(26歳。ラトビア/世界ランキング13位)はこう証言する。
「お洒落をして、女の子と遊びに行く選手を見て、ノバクはこう言っていた。『僕たちには将来がある。テニスで成功するためには、今は練習だ』。15歳やそこらで、ノバクは完全にプロフェッショナルだった」
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