「もう終わった」の声を一蹴。フェデラーはまだ進化していた! (2ページ目)
その中で見られた大きな変化のひとつが、ラケットを変えたことである。昨年のウインブルドン以降、フェデラーは従来よりも大きなラケットを使い始めたのだ。昨年は複数のラケットを使って試行錯誤を繰り返したが、今年の全豪オープン以降は、「ベストの1本に決め、日に日に手に馴染んできた」と言う。
さらに、そのラケット以上に大きな変革が、今シーズンから往年の名プレイヤー――ステファン・エドバーグ(1983年~1996年/スウェーデン)をコーチに招いたことである。
このふたつの変化が指し示す方向性とは、端的に言ってしまえば、より攻撃的なテニスへの志向であり、サーブ&ボレーの多用である。分けても、サーブ&ボレーの名手であるエドバーグは、フェデラーの背中を押してくれた存在だ。
「今でも以前のようにプレイすることは可能だということを、ステファンが僕に気づかせてくれたんだ。2001年ごろの僕は、ファーストサーブのときは80%の確率でサーブ&ボレーに行っていた。セカンドサーブでも、30~50%は行っていたはずだ。それが最近では、1セットで2~3回しかやらなくなっていたんだ」
そう認めた上で、フェデラーは次のように続ける。
「サーブ&ボレーは、僕のテニスに選択肢を加え、完成度を上げるために欠けていた『パズルのピース』だった。さらには新しいラケットが、そうする助けにもなっている。パワーあるサーブが高確率で打てるようになったからね」
さらに興味深いのは、フェデラーがサーブ&ボレーについて語った、次のような言葉である。
「大切なのは、精神面。重要な局面で挑戦できるかどうかである。40-0でサーブ&ボレーをするのは、簡単だ。だが、15-30などの劣勢でもできるのか? そこが大きい」
フェデラーが、この自らの言葉を極限状態で実践したのが、ウインブルドン決勝戦での第5セット。3-4で迎えたサービスゲームでのことだ。ジョコビッチにブレークポイントを握られた場面で、フェデラーはセカンドサーブでサーブ&ボレーに出たのである。あまりに不意を突かれたのか、返球に行ったジョコビッチは足を滑らせる。芝に倒れこんだまま、自身のコートに柔らかく落ちるボレーを見つめるジョコビッチの顔からは、驚きや悔いを通り越した、あきらめの笑みがこぼれていた。
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