全英初優勝。
マレーに欠けていた「最後のピース」を埋めたレンドルの言葉 (3ページ目)
「多くの人がそう思わない時でも、イワンは僕を信じてくれた」
たとえ負けても、グランドスラムの決勝で納得のいくプレイができたのは、昨年の決勝が初めてだった。
マレーがグランドスラムで優勝するために必要な最後のワンピースは、『自分の力を信じ切ること』だった。勝負の分かれ目となる大切な場面でも、最後まで自分自身の力を信じられるようになったマレーは、大きな結果を残していく。昨年夏には、ロンドンオリンピックで金メダルを獲得。さらに、9月にはUSオープンで初優勝し、初めてグランドスラムタイトルを獲得したのだった。
そして、「人生で最もハードな数ポイントだった」と振り返った今回のウインブルドン決勝でのラストゲームを乗り越え、勝利が決まった瞬間、マレーはコートにひざまずき、初優勝をかみしめた。
実は、レンドルコーチは、現役時代にグランドスラムで8回優勝したが、ウインブルドンだけは優勝できなかった(準優勝2回)。30歳と31歳の時には、得意としていたローランギャロス(全仏)を欠場してまで、ウインブルドンへの準備をしたが、結局、ウインブルドンのタイトルには手が届かなかった。
だからこそ、マレーは53歳になったレンドルコーチと一緒に勝ち取ったウインブルドンのタイトルが嬉しかった。コートサイドでマレーのプレイを見守るレンドルは、いつも左手にあごをのせて微動だにせず無表情。だが、マレーがコート上で優勝インタビューを受けている時、ほんのわずかだったが、唇をゆるめて笑った。
「イワンのためにも、優勝を成し遂げられて嬉しい」
そう語ったマレーは、センターコートでスタンディングオベーションが続く中、コートからプレイヤーボックスへ駆け上がり、真っ先にレンドルと握手をした。レンドルはひと言だけ発した。
「君を誇りに思う」
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