【テニス】錦織圭、エースの自覚。デ杯ワールドグループ残留を誓う

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

デビスカップデビューから4年。錦織圭は真のエースに成長したデビスカップデビューから4年。錦織圭は真のエースに成長した「圭は、本当はあまり団体戦には向いていないと思う」――。以前に錦織圭の父親が、そのように言ったのを耳にしたことがある。

 テニスの団体戦が個人戦と最も大きく異なることとは、他選手との兼ね合いにより、自分の試合に求められる条件が変わる点だろう。どんな形でも勝たねばならない試合もあれば、単に勝つだけでなく、セットを落とすか否かもチームの命運を左右することがある。

 錦織は本来、状況を感知する能力が高く、試合中には相手の心理を的確に読みながらプレイを組み立てる選手だ。だが、団体戦のように条件が複雑になると、多すぎる情報や人々から向けられる感情が、頭脳と身体を束縛してしまう。思い返せばたしかに、錦織のデビスカップデビュー戦も辛い記憶を伴うものだ。敵地インドで先鋒を任された当時18歳の錦織は、悪条件の中、5セットを戦い惜敗する。4年前においても錦織のランキングは100位前後であり、相手のインド選手は300位台。数字では錦織の方がはるかに優勢だったが、机上の計算通りにいかないのが、デビスカップの怖さである。
 
 では、現在の錦織はどうだろうか? 錦織はこの4年間のデビスカップで、シングルス7戦、ダブルス1戦を戦っており、デビュー戦の敗退を除けば、以降はシングルスで1敗しただけである。中でも特に印象的だったのは、昨年7月に行なわれた対ウズベキスタン戦。日本で行なわれたこの重要な対戦で、錦織はシングルス2勝に加え、ダブルスでも1勝を上げる獅子奮迅の活躍を見せたのである。

 旧ソビエト連邦のウズベキスタンには、デニス・イストミンというトップ50に定着している実力者がいる。1年前の時点で錦織とイストミンの実力は伯仲しており、このエース対決を制せるかどうかが、チームの命運を握っていたのである。その緊迫の一戦で、日本のエースは第1セットを落としながらも、3セット連取で逆転勝利。試合後、「着替えようと思いシャツを脱いだが、代わりのシャツが見当たらなかった」にもかかわらず、「ファンの皆さんにお礼をしたかったから」と、上半身裸のままマイクを握って観客に挨拶した。その姿は、個人戦では味わえない一体感や興奮で全身を満たしているようであった。

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