【テニス】クルム伊達が次世代に託す思い。「強い日本に戻ってほしい」

  • 神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi
  • photo by Ko Hitoshi

フェドカップに出場したクルム伊達公子。日本代表として有明でプレイするのは16年ぶりだったフェドカップに出場したクルム伊達公子。日本代表として有明でプレイするのは16年ぶりだった 女子テニス国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループI・プレイオフ「日本 vs. ベルギー」で、日本が4勝1敗で勝利を収め、2007年以来6年ぶりのワールドグループ復帰を決めた。
※上位16カ国が属するワールドグループは、1部グループの8カ国と、2部グループの8カ国に分かれている。今季の1部はスペイン、ドイツ、イタリア、チェコ、セルビア、ロシア、ウクライナ、ベルギー。

 3連勝で日本を勝利に導いたのが、今回シングルスで2勝を挙げた、22歳の若き日本のエース・森田あゆみと、シングルスで1勝を挙げた41歳のクルム伊達公子だった。

 今回、クルム伊達は、日本のテニスの聖地といわれる有明コロシアムに、16年ぶりに日本代表として戻ってきた。

 1996年のドイツ戦は、伊達公子が当時の女王シュテフィ・グラフを3時間25分の死闘の末に破って勝利し、今でも"有明の奇跡"として語り継がれている。しかし、クルム伊達は、16年前の記憶に感傷的になることはなく、目の前の勝負だけに集中していた。

「今を生きているので、過去にはとらわれないようにしている。96年のフェドカップのことは考えず、今の監督とチームの仲間とスタッフと戦っています」

 90年代半ばの"伊達公子時代"には、日本はワールドグループに定着していたこともあって、2年前の2010年、約14年ぶりにフェドカップ日本代表に復帰した時、クルム伊達はアジア/オセアニアゾーンIでの戦いに、違和感を覚えたという。

「システムも変わりましたし(1990年前半まではフェデレーションカップと呼ばれ、1都市で1週間の集中開催)、当時の日本は、ワールドグループにいるのが当たり前だったから」

 そんな過去のイメージと現在のギャップを感じながら、同時に、日本はワールドグループにいなければいけないという強い思いもあった。

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