ラグビー明治大・石田主将「数えきれないくらい、ひとりで泣いた」。誹謗中傷に耐え続けて戦った大学最後の1年間 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【後半10分が試合の分岐点】

 快晴ながら寒風が強く吹くなか、試合は始まった。「ハングリースピリッツ」を試合テーマに掲げて臨んだ明治大だったが、序盤のプレーは固く、選手の声もあまり出ていなかった。

 そんななかで早稲田大に先制トライを許し、PGで得点を重ねられる。それでも前半終了間際、武器であるモールを押し込んでHO(フッカー)松下潤一郎(3年)がトライを挙げ、14-13で折り返すことに成功した。

 やっと勢いが出てきたと思われた後半最初の10分、明治大は相手陣でアタックを続けるが、自らのミス、そして早稲田大の粘りのディフェンスにトライを奪うことができなかった。

『負けに不思議の負けなし』

 勝負のアヤから言えば、やはりここで追加点を挙げておかなければならなかったのだろう。

「意外と(ゴールラインが)遠かった。相手陣22メートルに入ってから、フィジカルでも勝っていたし、一歩前に出られていたが、それでもこじ開けられなかった。やってきたことは間違いでなかったですが、早稲田大のほうが一枚上手だった」(齊藤)

 早稲田大は後半、HO佐藤健次(2年)とPR(プロップ)井元正大(4年)のFWの前1列の選手を次々と投入。それに押された明治大は前半優勢だったスクラムで2度反則を犯してしまい、試合の流れが相手に傾いていく。

 その隙を見事に早稲田大に突かれた。後半17分、スクラムを起点にトライを奪われ、その2分後にもパスをインターセプトからトライを許し、27-14とリードされてしまった。

 明治大もすぐに動き、HO紀伊遼平(4年)とPR大賀宗志(4年)を投入。ゴール前でスクラムにこだわり、後半28分には1トライ&1ゴールで逆転できる6点差まで追い上げた。

 奇跡の逆転を目指し、アタックを続けた。残り時間わずかで、キャプテンの石田にボールが渡る。外にもうひとり選手がいたが、石田は「考えてはなかった。自分の体が思うままに行った」とステップで内に切れ込んだ。だが、相手にタックルされて倒れたところを早稲田大キャプテンFL(フランカー)相良昌彦(4年)にジャッカルされて、万事休す。

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