早大は1年生コンビの活躍などで慶大に辛勝。
亡き大先輩に捧げる勝利も「対応力」に課題 (3ページ目)
結局、早大は40-33で逃げきった。対抗戦の早慶戦の通算成績を71勝20敗7分けとし、1敗(5勝)を守った。対抗戦優勝へ望みをつないだ。
大田尾監督は「ゲームプランを状況によって変化させることが必要だと思う」と反省した。
「前半はいい流れだった。後半、相手もちょっと(戦い方を)変えてきたら、自分たちも対応していかないといけない。まだまだ対応力がなくて......。勉強が足りないのかなと思います」
もっとも、課題は明確となった。スクラムとディフェンス、とくにラインアウトからのモールディフェンスである。対抗戦最終戦の早明戦(12月5日)。明大はそこを突いてくるにきまっている。
会見の終盤。スポーツ紙のラグビー担当記者が聞いた。もし日比野さんがご覧になっていたら何と言いますかね、と。監督は少し考え、エンジ色のマスクの下で小さく笑った。
「日比野先生が見ていらしたら、何でしょうね、"モール、何とかならないのか"という感じじゃないですか」
記者からも笑いが起きた。日比野さんなら、きっとこうも言うだろう。もっと意思統一させたらどうだ、と。
たとえば、ラインアウト、相手と競るなら競る、ディフェンスに備えるなら備える。ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)、1人目がもっと激しく当たる、早くサポートする、倒れたらすぐ立ち上がる。走る。
そしてスクラムだ。フロントローはより結束し、後ろ5人(ロックとフランカー、NO.8)の押しを信じて我慢する。
実は大田尾監督は佐賀工高時代、当時早大監督だった日比野さんの誘いを受けて早大への進学を決めた。日比野さんから言われた言葉が、「当たり前のことを当たり前にやる」ということだった。大田尾監督は言葉に力を込めた。
「その教えは、学生には常に伝えています。"まずは、些細なことでもちゃんとやろう"って。今日出た課題をつぶして、明治戦に向けていい準備をしていきたい」
大学王座奪還に向け、挑戦が続く。日比野さんら故人の"荒ぶる魂"は、早大ラグビー部に脈々と受け継がれているのである。
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