定位置獲得へ。ラグビー日本代表の松田力也が進化をアピール「できる限りの準備をしてきた」 (2ページ目)
素材は文句なしだ。181センチ、92キロ。名前は京都・伏見工高時代から全国に知れ渡っていた。実直、真摯、誠実。名前の「力也(りきや)」は、病気で早逝した父による「男は力なり」との熱い思いが込められている。
帝京大では大学連覇に貢献し、2016年、大学4年の時のカナダ代表戦に途中出場して初キャップ(国代表戦出場)を獲得した。パナソニックに進み、FB(フルバック)からセンター、SOと複数のポジションをこなしながら、日本代表では控え選手に甘んじてきた。
2019年のW杯でも、今年前半の欧州ツアーでも、先発SOの座は32歳の田村優(横浜キヤノンイーグルス)に譲り、松田はほとんどベンチを温めてきた。屈辱だった。緊張と重圧と苦悩はいかばかりか。「納得することができない結果だった」と漏らしたこともある。
でも、くさらなかった。最後のトップリーグでは、司令塔として、所属チームを日本一に導いた。松田にとって、この試合が3年ぶりの日本代表の先発だった。松田は言った。
「ずっと、ずっと、先発出場がないなかで、自分自身はいい準備をして、待つことしかできなかった。だから、代表活動期間だけでなく、トップリーグ期間も、できる限りの準備をしていた。チャンスがくれば、自信を持ってプレーしようと思っていた」
そういえば、前回2017年11月の豪州戦(横浜・●30-63)で背番号10のジャージを着たのは、まだ23歳(当時)の松田だった。それから、4年。日本代表は底力をつけたが、松田も進化を遂げた。「成長を実感する部分は?」と聞けば、松田は言った。
「あの(2017年の)試合はまだまだ若かったですし、経験も浅かったので、すごく反省した試合だったということを覚えている。その後、いい経験をさせてもらったので、自分自身、より落ち着いてゲームを進めることができた。冷静に、着実に、成長できているんじゃないかと感じています」
膨らむ自信、高まる意欲。課題はもちろん、ある。プレーの精度と試合運び、そして何より、仲間からの『信頼』である。
座右の銘が『one more push』。「次はチームを勝利に導けるようなゲームコントロールをアピールしたい」。短い言葉に実感がこもる。いざ、2023年W杯フランス大会へ、SOの定位置獲得へ。松田はこれからの欧州ツアーでさらなる飛躍をめざす。
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