イングランドに大ダメージ。プロップの負傷→スクラム崩壊が誤算だった (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 ファレルも前半、2つのPGを決めた。でも、ゴールラインにあと数十cmに迫ろうとも、ラインを割ることはできなかった。スクラム、接点で圧力を受けるものだから、ハンドリングミスも続発した。負けん気のつよいファレルが「とくに前半はあまりうまく戦えていなかった」と正直に漏らした。

「相手にずっと、勢いがあった。後半は少し、ペースを取り戻したけれど、それは十分ではなかった。ただ、最後まで戦ったチームを誇りに思っている」

 試合終了後、このチームの最後の円陣がピッチで組まれた。ファレルの述懐。

「最後は思い通りにはいかなかったけれど、自分たちはこの大会をエンジョイできたと思う。多くの人が努力を積み重ねてきて、エンジョイできた。これからも、前進するのみだ。そう、みんなに伝えた」

 ジョーンズHCは、前回の2015年ラグビーワールドカップ(RWC)で日本代表に南ア戦の金星など3勝(1敗)をもたらした。イングランドはその地元のRWCで1次リーグ敗退の屈辱を味わった。ジョーンズHCは前回RWC後、どん底のイングランドのHCに就いた。

 チーム強化のリーダーに指名したのが、才能豊かで闘争心の塊のファレルだった。ファレルの父もまた、ラグビーの名選手だった。ファレルは17歳だった2008年、父とサラセンズの公式戦に親子出場している。ファレルをデビューさせたのが、当時サラセンズでチームディレクターを務めていたエディー・ジョーンズだった。

 縁だろう。ただ、そのふたりの夢は最後、実らなかった。ファレルは言った。

「結果はつらいものだったけど、大会としては本当にすばらしいものだった。また、(RWC決勝に)戻ってきたい」

 ジョーンズHCは2003年のRWC豪州大会では地元豪州を率いて、決勝戦で延長の末、イングランドに敗れている。

 これも縁だろう。今度はイングランドのHCとなったが、またも優勝を逃した。59歳は、自分に言い聞かせるように言った。

「今夜、イングランドは世界で2位になったわけだ。もちろん、1位になりたかった。優勝できなかった。でも、世界で2位だ。我々のことを認めてほしい」

 ファレルもイングランド代表もまだ若い。エディーもまだ、チャンスがある。夢の実現は、4年後のフランスの地で。

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