ラグビーの「TMO」って何。誤審減も判定の迅速さと一貫性は必要だ (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text Matsuse Manabu
  • photo by Kyodo News

 このTMO、日本代表がロシアを下した開幕戦でも見られた。前半34分、WTB(ウイング)の松島幸太朗が右隅に飛び込み、トライしたかに見えたシーンがあった。しかし、TMOに持ち込まれ、結局、ノートライと判定された。その際、TMOを初めて知った人が多かったのではないだろうか。

 また、日本代表が優勝候補のアイルランド代表に劇的な勝利を収めた試合でも、前半21分、アイルランドのトライをめぐり、TMOに持ち込まれた。この時は、アイルランド選手がインゴールにボールをグラウンディングしているかどうかの確認だった(トライは成立)。

 国際舞台で活躍し、ラグビーW杯2015年大会では日本代表を陰で支えた日本初のプロレフリー、平林泰三さんは「より正確な判定をするため」とTMOについて説明する。

「きわどい判定を、テクノロジーを使って精度の高い判定に導いていくため、現在、ワールドラグビー(ラグビーの国際統括団体)では、"コミュニケーション・プロトコール"と呼ばれる、レフリーとアシスタントレフリー、あるいはレフリーとTMOスタッフの話す手順に関するガイドラインを作成し、それに沿って判定がされています」

 TMOは、ラグビーW杯では2003年大会から導入されている。確かに誤審が減り、判定が正確になったようにみえる。「でも...」と平林さんは続ける。

「ガイドラインは毎年のように改定されています。グラウンドでのフィーリングと短い時間で手際よく際どい判定を下すために、(レフリーは)非常に高いストレス状態で最善の決定をしていかないといけない難しさがあります」

 ワールドラグビーによる今大会のレフリーの指名においては、次回の2023年フランス大会も考えてレフリー、アシスタントレフリーを選んでいることもあり、レフリーの経験値と認知レベル、ゲーム理解度にはギャップがある。平林さんは言葉を足した。

「そのためレフリーとTMOでは、さらにゲームの強度・難易度に対するコモンセンス(常識)の共有が難しく、その部分が過敏であったり緩かったりという、一貫性のなさとして見られることにもなります」

 TMOによる中断時間を、熱戦の適度な「間」という人もいる。また協議中に電光掲示板に映る録画映像を楽しむファンもいる。時には劣勢の疲れている側の選手が態勢を立て直すことにもなるだろう。

 だが半面、TMOに頼りすぎて試合が再三中断されると、ゲームの流れやリズムが止まり、プレーしている選手はもちろん、見る側のファンも戸惑うことにもなる。

 レフリーの役目は、試合を安全、かつスムーズに進行することである。レフリーには毅然とした態度での判定と、TMOの中断時間が短くなることを期待したい。

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