SO田村優と相性は良好。SH茂野海人は強気を武器に這い上がってきた (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 そして2017年、茂野は大きな決断をする。

「2019年のワールドカップを考えて、プロ選手としてもう一段階レベルを上げたい」

 トヨタ自動車への移籍だ。しかし、突然の移籍だったため、リーグの規定上必要な移籍承諾書が発行されず、2017年度はトップリーグでプレーすることが叶わなかった。

 その結果、2016年秋から日本代表の指揮官に就任したジョセフから声がかかることはなく、しばらく桜のジャージーから遠ざかることを余儀なくされた。

 ただ、茂野は試合に出られない時期も努力を続けた。トヨタ自動車では相手チームを分析し、メンバー外の選手としてチームのサポートに徹する日々を送る。

「いろんなこと考えて移籍を決断し、結果的に、1年間(トップリーグに)出られなかった。でも、今となっては、出られなかった期間も自分にとっては成長することができた。今につながっています」

 トップリーグに1シーズン出られない苦しい経験を経たのち、サンウルブズでアピールを続けた結果、ワールドカップメンバーを勝ち取った。そのため、「這い上がってきた気持ちが強い」と茂野は語る。ワールドカップでは、「世界を驚かせるようなプレー、感動を与えられるようなプレーをしたい。強気にプレーしたいし、隙があればランでトライまで持っていきたい」と意気込む。

 なかでも、決勝トーナメント進出のカギを握ることになるだろう、予選プール最終戦のスコットランド代表をとくに意識している。

「(2016年に対戦した時)SH(グレイグ・)レイドローがすごくいい選手だった。対戦するチャンスがあるので、借りを返せるようにやっていきたい。当時はレイドローと差があったかもしれないですが、僕も成長したと思うので、それを発揮したい」

 茂野の魅力は、パスでもキックでもランでも「強気」でチームを前に押し出すプレーだ。それを武器に、日本代表をベスト8という高みに導くことができるか。這い上がってきた「9番」が、ついにワールドカップのピッチに立つ。

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