早稲田・岸岡が度肝を抜くビッグプレー。流れを手繰り寄せ慶應に勝利 (2ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

 そのチームディフェンスと並んでもうひとつ、突出したプレーを見せていたのが、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた身長173cmのSO(スタンドオフ)岸岡智樹(3年)だ。東海大仰星高時代に「高校3冠」を成し遂げ、大学では数学を専攻する頭脳派の司令塔は、この試合で誰よりも冷静だった。

「みんなに火をつけたい」と気合いを入れて臨んだ岸岡は前半25分、大学ラグビー史上に残るプレーを平然とやってのける。自陣10メートルラインの前でパスを受けると、そのまま躊躇なくドロップキック。放物線を描いたボールは、そのままHポールの真ん中を通り、3−0と先制に成功する。トップリーグでもお目にかかれない、ラグビーファンの度肝を抜く55メートルのドロップゴールだった。

 このゴールには、味方も大いに驚いた。相良監督が「ドロップゴールは想定外でした(笑)。見ているほうもビックリしました。ワールドクラスだなと思いました!」と手放しで賞賛すれば、セットプレーの要であるHO(フッカー)宮里侑樹(4年)も「持っているなと思いました。さすがです。天才しかできない。ムードが変わりました!」と後輩のプレーに目を丸くした。

 当の岸本も「練習でも遊びで40メートルくらいしか狙ったことがない」と、さすがに55メートルのドロップゴールを決めたのは初めてだと言う。

「相手のキックが伸びていなかったので、上空は風があるなと思っていました。流れを相手に持っていかれたくなかったし、敵陣にいたかったので、もし外れても相手のドロップアウト(慶應大が22メートルラインからのドロップキックでのリスタート)だったので狙ってもいいかなと」

 奇襲のひとつだったかもしれないが、岸岡のビッグプレーが早稲田大に流れを呼び込んだことは間違いない。その後も、相良監督に「満点に近い内容だった」と言わしめるほど、岸岡のゲームメイクは冴えわたる。前半は風上だったこともあってキックを多用し、味方のコールを聞きながら相手の裏にハイパントキックを蹴り分け、陣地争いを有利に進めていった。

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