ラグビーW杯日本大会への試金石。NZ対豪州には3つの価値があった (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 NZの5トライのうち、インターセプト以外は、安定したスクラムを起点にしたものだった。まだ21歳、閃光のごとき鋭いランをみせたWTBリコ・イオアネ、50キャップ目、必殺のオフロードパスでボールを生かしたCTBソニー・ビル・ウィリアムズ...。個の才能を随所に輝かせながらも、チームプレーに徹するのである。これぞオールブラックス。

 残り2分でのスクラムからのWTBイオアネのトライは、SOバレットのトリッキーな"股下パス"からつないだものだった。2年連続でワールドラグビーの年間最優秀選手に選ばれているSOバレットは「準備通りのプレーができた」と笑顔だった。

「とくにセットプレー(スクラム、ラインアウト)を通してトライにつながったのがよかった。スクラムから1フェーズ(局面)、2フェーズまでは徹底的に練習している。毎試合、毎試合、どうやったらチームとしてよくなっていくのかが課題です」

 結局、37-20でライバルに快勝した。これで今年は3戦全勝、16年連続保持を決めていたブレディスロー杯に花を添えた。来年のW杯決勝の競技場での勝利の味も格別だろう。

 SOバレットは続けた。

「パフォーマンスは別にして、こういった雰囲気を味わうのはいい経験になった。スタジアムに慣れるという意味でもよかった」

"マン・オブ・ザ・マッチ"のWTBイオアネは、天然芝と人工芝のハイブリッド芝のことを聞かれ、「ベスト中のベスト」と言った。

「ピッチのおかげで、私たちが求めている速い展開のラグビーが可能になった」

リード主将はこうだ。

「時間の使い方、施設の使い方に慣れることができた。競技場もファンタスティック。来年は満員のスタンドでプレーすることを楽しみにしています」

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