【ラグビー】トップリーグ王者に完敗も、帝京大が見せた気迫と成長

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu  齋藤龍太郎●写真 photo by Saito Ryutaro

 大学7連覇の勢いと、トップリーグ(TL)3連覇のプライドがぶつかる。19季ぶりに一発勝負となった日本選手権。実力差はともかく、帝京大は最後までTLの分厚い壁にチャレンジし続けた。

後半38分、帝京大ウイング竹山晃暉が意地のトライ後半38分、帝京大ウイング竹山晃暉が意地のトライ

 冬空の1月31日、秩父宮ラグビー場。試合後、帝京大のフッカー、坂手淳史主将は目に涙を溜めた。

「正直、悔しいです。負けた悔しさ、もっとできたなという思い......。みんなの悔し涙や、スタンドの仲間の悔しそうな顔を見たら、自然と(涙が)出てきました」

 そうはいっても、学生王者はよく戦った。立ち上がり、「ロケットスタート」(パナソニック・堀江翔太主将)を狙っていたTL覇者に2連続のノーホイッスルトライを奪われた。前半5分で14点を先行された。

 でも、ゲームは壊れなかった。飯野晃司、金嶺志(きむ・りょんじ)の両ロックが故障で退場しても、フォワードはコンタクトエリアで塊となってファイトした。ラインアウト、スクラムでも圧倒されることはなかった。踏ん張った。

 残り2分。帝京大がペナルティーキックをタッチに蹴って、相手ゴールに迫る。左の5mラインアウト。「絶対、トライをとろう。ラインアウトモールを押し込むぞ」。坂手主将は円陣でそう、声を張り上げた。

 うまく捕球し、赤い塊となって押しこんでいく。が、NO8のブロディ・マクカランはあと30cm、ゴールラインに届かなかった。ドライブし、さらに途中交代のロック姫野和樹がインゴールになだれ込んだが、トライには至らず、5mスクラムと変わる。

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