【ラグビーW杯】スクラムの進化こそが、日本の強さの源である (2ページ目)
「イケるけど、まだ向こう(サモア)が元気やから、もうちょっと待ってみようとなったんです。押せるチャンスは絶対来るから。その時、ST(スクラムトライ)を狙いにいこうと思ったんです」
ちなみに1本目、2本目はマイボールのスクラムで、素早くボールをバックスに出した。マイボールのスクラムは「クイック」と「ドライブ」の2種類があり、クイックスクラムはボール投入してからボール出しまで3秒以内。ドライブスクラムは相手にプレッシャーをかけて、前進するスクラムをいう。
3本目のスクラムでチャンスが来た。サモアがシンビン(一時的退場)で2人少ない時、敵陣ゴール前の左中間でPKをもらい、スクラムを選択した。相手FWは7人。稲垣が落とそうとしてきた135キロの巨漢を持ち上げ、8人で前に出た。ドライブである。これにサモアがたまらず崩れ、認定トライ(相手の反則がなければ、トライが獲れていたという判定)となった。日本にとって、W杯初のスクラムトライと言ってもよい。
コミュニケーション、いわば理解力の勝利と堀江が強調する。
「僕は試合中、いつも周りに"しゃべれ、しゃべれ"と言っているんです。だって、1、3番の状況が分からないと、どういうふうに組めばいいのか分からないじゃないですか。そこにこだわり続けた結果が、いまの日本のスクラムになったんです。スクラムは相手の出方をうかがいながら、全員で同じ方向に仕掛けていくことが大事ですから」
あの南アフリカ戦(9月19日・34-32で勝利)のロスタイムの逆転トライも、PKからスクラムを選択し、それを押し込んでから、ボールをバックスに回したものだった。
2 / 3