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ラグビーW杯、新国立での開催断念に「災い転じて福」はあるか? (3ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Kyodo News

 基本設計に入り、2013年9月、東京が2020年五輪開催地に決定した。ところが、総工費が最大3000億円に膨らむとの試算が出る。それはあんまりだ、となって計画を見直し、2014年5月、文科省が総工費を1625億円とする基本設計案を公表した。その後、実施設計に移り、下村博文文科相と舛添要一東京都知事の間で費用の一部負担をめぐり対立、すったもんだした挙げ句、6月、総工費を2520億円とする整備計画案が公表された。
 
 7月7日の七夕の日、JSCの有識者会議が整備計画案を了承し、10日、安倍首相もこの案を支持した。だが、安保法案で逆風を受けるや一転、衆議院特別委員会で安保法案を強行採決した15日、安倍内閣は「新国立見直し」に乗り出した。内閣支持率のさらなる低下を恐れたのだろう、17日の安倍首相の「白紙撤回」宣言と相成った。これは政治である。

 たしかに一連の流れの中で、日本ラグビー協会名誉会長の森喜朗・東京五輪パラリンピック組織委員会会長の影響力は大きかっただろう。だが、このゴタゴタの理由は個人ではなく、システムの問題にあるように思う。もはや「誰が悪い」とかしょうもない話ではない。責任のある専門家グループがいないのである。プロならゴールから逆算して物事を決めていく。なのに、工期も経費も計画が杜撰(ずさん)だった。

 そのあおりを食らったのがラグビーのW杯なのである。振り回されたラグビー界が同情されるならともかく、悪者扱いされる筋合いはまったくない。

 今年3月、2019年W杯の国内開催地12会場が決まった。皮肉にも7月15日、その自治体代表者による“キックオフ・ミーティング”が東京で開かれたばかりだった。嶋津事務総長はこうも、言った。

「災い転じて福となす、となるように取り組んでいきたい」
 
 ここは心機一転するしかあるまい。大事なものは器ではなく、中身である。W杯の試合そのものである。W杯をどう盛り上げ、どう価値を高めていくかである。

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