【ラグビー】金星逃すも、エディーJが4合目から見る風景 (3ページ目)

  • 松瀬学●文 text by Matsuse Manabu
  • 高見博樹●写真 photo by Takami Hiroki

 ジャパン・ウェイ(日本らしさ)とは、いろんなところからシェイプを重ねて相手ディフェンスを崩し、トライを狙う素早い展開を意味する。そのスタイルの中、21歳のセンター松島幸太朗のプレーは光り輝いた。
 
 松島にはナイスチャージもあった。スピード、柔軟性だけでなく、センスがいいからだ。「全然、通用したと思う」。自信も膨らんだ。ついでにいえば、ドーピング違反による資格停止処分から戻った“大器”、26歳の山中亮平のジャパン復帰を祝福したい。
 
 今週、選手たちが宿舎で見たビデオのひとつが昨年6月のウェールズ戦の金星のものだった。第1戦から第2戦への闘争心の変化を思い出させたかったのだろう。闘志はあった。だが、あの時の我慢がなかった。

 この日、風邪にも負けず、ハードなヒットで活躍したのがトンガ出身のナンバー8、アマナキ・レレイマフィだった。関西大学Bリーグの花園大学出の24歳。でも、最後にボールを奪われた。試合終了。濡れた芝に寝ころび、両手で顔を覆っていた。あの時は?

「なんか、泣きました。試合、またあるから、がんばります」
 
 悔恨、自信、挑戦……。すべては来年のワールドカップ(W杯)の準備である。W杯を山に例え、ジョーンズHCはこう、言った。

「ぼくの人生の中で、ここまできつい練習をしている選手たちをみたことはない。まるで山登りです。ジャパンはいま、1000メートルを越えたところ。これから風が強くなるし、傾斜もきつくなるし、地面もガタガタになります」

 1000メートルはまだ、目指す山の4合目あたりだと説明した。課題は、さらなるフィジカル、スキルアップは当然として、攻守の切り返し、反応、連携プレーの精度、シェイプでのランのアングルや走り方など細かいところであろう。山道の方向は間違っていない。
 
 この惜敗を糧(かて)とし、日本代表は欧州遠征に出かけ、強力FWのルーマニア代表(11月15日)、グルジア代表(11月23日)と戦う。テーマが、何よりセットプレー(スクラム、ラインアウト)のさらなる強化である。あと1年。W杯という山のてっぺんの風景はぼんやり、見えてきた。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る