【ラグビー】パナソニックの堀江翔太と
田中史朗が示した「ジャパン躍進の道程」
青いパナソニックのジャージーが、次々と黄色いサントリーに突き刺さる。どこか『覚悟』を帯びた猛タックル。ふたり目が食い込み、押し戻す。ディフェンスから攻撃へ。
11日のラグビー・トップリーグのプレーオフトーナメント決勝(秩父宮)で、パナソニックが45-22でサントリーに逆転勝ちした。
3年前は「集団の力」で勝った。今回は「個々の力の結束」で勝った。その象徴が、スーパーラグビー(※)でプレーするフッカーの堀江翔太とスクラムハーフ(SH)田中史朗である。
※ニュージーランド(NZ)、オーストラリア、南アフリカ共和国の3カ国、計15のクラブチームで行なわれる世界最高峰の国際リーグ戦。堀江はオーストラリアのレベルズ、田中はNZのハイランダーズに所属。
オーストラリアのレベルズにも所属しているパナソニックのフッカー堀江(写真中央) 試合の流れを決めるビッグタックルは、後半の10分ごろだった。敵陣の左中間。百戦錬磨のサントリー・フランカー、ジョージ・スミスが切れ込んでくるところを、主将の堀江がぐいと踏み込み、左肩をスミスのみぞおちに突き刺した。そのままスミスを仰向けに倒し、自らはすぐに立ちあがって、さらに激しく足をかいて前に出る。
教科書通りのタックルである。そのままラックを押し込み、サントリーの反則をもぎ取った。PGが決まって、リードは7点に拡がった。堀江はその後も体を張り、チームをプレーで引っ張った。終了直前には、相手ボールのスクラムをターンオーバーし、とどめのトライに結びつけた。
完勝である。主将の重圧からの解放ゆえか、堀江は泣いた。よほどタフな試合だったのだろう、口元にべたりと血ノリがついていた。
堀江が言う。
「うれし過ぎて、試合後、(チームメイトには)何も言えなかった。ノンゲームメンバー(試合に出ない選手)を含め、みんなの勝利です。パナソニックで新たな歴史をつくったのは非常にうれしく思います」
かたや終了間際に交代したSH田中はノーサイドの瞬間、青色のベンチコートを着たまま、ベンチを飛び出した。166cmの体で転がるように駆け、歓喜の輪に加わる。こちらは笑顔。
「ほんとうに、やっと(優勝を)取り返したな、という感激でした。(三洋電機から)パナソニックにチーム名が変更になってから、ひとつもタイトルをとってなかったので......。いろんな方への感謝の気持ちがあふれてきて、はしゃいでいました」
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