【ラグビー】「W杯で勝つために」。マイケル・リーチが突き進む充実の日々 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLOSPORT

 この日も9トライである。後半途中にリーチはベンチに下がった。改めて、東芝のチームメイトの強さに驚いた。

 リーチが笑う。
「ほんと、いいチームだな、と思います。強い体。強いメンタル。ほれぼれします」

 実はチームの転機は昨年12月末のサテライトチーム(2軍戦)のクボタ戦を見たことだった。1軍が神戸製鋼に敗れ、2敗目を喫した直後である。この試合で2軍の連中はとことん体をあて続け、「戦う魂」を示してくれた。

 主将の豊田真人が打ち明ける。
「Aチーム(1軍)は(あの試合を見て)すごい衝撃を受けたんです。あれが東芝の原点に戻るきっかけだった。まず練習が変わった。そして試合のプレイも変わったんです」

 その後、チームは連勝街道を走る。レギュラーシーズン1位のサントリーも破り、上昇気流に乗った。ひとつにまとまった。

 Bチームが強いのだから、本番さながらのガチンコ練習も激しさを増した。部内競争がチームのレベルを押し上げる。昨季、日本選手権準決勝でパナソニックに苦杯を喫した悔しさも後押しとなっている。

 チーム成長の象徴がリーチである。

 まだ23歳。先のワールドカップ(W杯)で4試合すべてに先発出場した。190cm、105kg。初戦のフランス戦で頭を4針縫うケガを負いながら、巨漢相手に体を張り続けた。

 でも、ひとつも勝てなかった。悔しさは消えない。日本の課題はわかった。

「世界との差はパワーと体力です。フィジカルとメンタルの強化が課題です」

 その課題解消のためなら、東芝はもってこいだろう。強い連中にもまれ、成長を実感している。練習もどん欲だ。豊田主将によると、ミーティングでは常に一番前の席に座り、練習でも先頭に立つ。

『神に誓うな、己に誓え』。

 これがリーチのモットーである。ニュージーランド生まれの戦う魂。まず目標はTL制覇。さらには日本選手権優勝である。

「夢はワールドカップで勝つことです」

 リーチの夢は、僕らの祈りでもある。

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