【卓球女子】石川佳純が語る王国・中国の異変 ナンバー1は不動も「選手層が少し薄くなっているようにも見えます」 (3ページ目)
【今の日本なら「勝てるチャンスはある」】
大舞台での中国の強さは普段の"3倍増し"と言っていいかもしれない。だが、石川さんはこんな兆しも見逃していない。
「かつてと比べると、中国の選手層が少し薄くなっているようにも見えます」
石川さんが世界選手権デビューを果たした2009年から現役を引退する2023年まで、中国には張怡寧(ジャン・イーニン)、李暁霞(リ・シャオシャ)、丁寧(ディン・ニン)ら不動のエースがいた。
彼女たちは五輪、世界選手権、ワールドカップの卓球三大大会を制した名選手で、「大満貫」という中国の称号を与えられている。
当時の中国はまさに、難攻不落。石川さんは「『絶対に勝てない』と思うような選手が何人もいて、しかも新しい選手がどんどん出てくるイメージでした」と振り返るが、「今は日本の選手たちが毎回、ワクワクする試合を見せてくれて『勝てるんじゃない!?』と思う試合が増えてきました」と声を弾ませる。
そうしたなか、今年6月から7月にかけて、平野美宇(木下グループ)が世界最高峰の中国超級リーグに参戦し、孫穎莎と同じチームでプレーしたことが話題になった。これについても石川さんは「中国側が日本の選手を戦力として認めた証ではないか」と捉えている。
「もちろん、日本の技術や戦術を見せてしまうデメリットもありますけど、それはお互い様。それ以上に、世界トップの選手たちがどんな思考を持っていて、どんな練習や生活をしているのかなど、試合のコート上では知ることができない部分を見られるのは、とてつもなく大きなメリットだと思います」
実際、平野は昨季リーグ2位の強豪・深圳大学のチームメートたちから刺激を受け、「毎日いろんな気づきがあって、(シングルス2回戦で敗れた世界選手権ドーハのショックから)気持ちを立て直すきっかけになりました」と話している。
勝負の厳しさを熟知する石川さん。中国を超えられなかった悔しさは今も忘れてはいない。その思いを胸に、つい2年前までコートに立ち共に戦った後輩たちにこうエールを贈る。
「選手の皆さんにはチャンスをどんどん増やして、『あと少し』『よし、勝った!』という風にステップアップしていって欲しいです」
日本の選手たちの雄姿に、これからも注目したい。
【プロフィール】
◆石川佳純(いしかわかすみ)
1993年2月23日生まれ、山口県出身。小学1年生で卓球競技を始め、小学6年生で初参戦した全日本選手権で3回戦に進出し注目を浴びる。2012年ロンドン五輪で、男女を通じて史上初のシングルス4強入りし、団体でも史上初のメダルを獲得。リオデジャネイロ五輪では団体で銅メダルを獲得した。2017年の世界選手権では、混合ダブルスで日本人選手48年ぶりとなる優勝を果たす。2021年の東京五輪では、日本のキャプテンとしてチームを引っ張り、団体で銀メダルを獲得。2023年5月、現役引退を発表。引退後は全国各地を訪ね、卓球を通じて経験した卓球の魅力、スポーツの楽しさを伝えている。
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