女子バドミントン大堀彩が27歳にしてつかんだ初五輪 2023年アジア大会から大舞台へ上昇曲線を描き始めたワケ (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

【選考レースにおける奥原希望への思い】

大堀は、昨年のアジア大会から上昇気流に乗った photo by YUTAKA/AFLO大堀は、昨年のアジア大会から上昇気流に乗った photo by YUTAKA/AFLOこの記事に関連する写真を見る

ーー五輪選考レースでは、ケガから回復した奥原選手が追い上げてくるなか、2024年1月末からのタイマスターズは準々決勝で奥原選手を破って優勝。3月のフランスオープンでは1回戦で奥原選手を破ってベスト8進出と、自力でオリンピックを引き寄せました。自分が変わった感覚もありましたか。

「私のなかで『変わらなくてはいけない。後悔しないように』をモットーにして、一からやり直そうと思い、誰が相手でも毎回『この対戦が最後かも』と思って臨みました。『この人とは今日が最後』と思って100%の力をぶつければ、それで負けたら仕方ないとあきらめがつく。ただただ、後悔したくない気持ちで五輪選考レース中は最後まで戦っていました。

 特に奥原さんに関しては、ほかの試合と比べても特別というイメージはあって、毎回毎回対戦する度に『ここまで一緒にずっと長くやってきて、その最後の対戦が今日なのかもしれない』と思っていました。そう思うとその対戦がすごく名残惜しいというか。ずっと負け続けてはいたけど、『これが最後』と思うと寂しい気持ちになったりもするので、だからこそ充実した試合にしたいという緊張感を持ってできました。

 リスペクトはあるけど、(五輪代表残り)1枠を争っていたので勝ちたいという気持ちももちろん強かったです。ずっと、同世代で背中を追いかけて戦ってきたリスペクトの意味も込めて、『このレースで必ず私が勝つ』という強い気持ちの面でも、本当にほかの人との試合と比べても一段と価値のある試合だったと思います」

ーーパリ五輪代表が確定した4月のアジア選手権では、決勝トーナメント2回戦で東京五輪銀メダリストの戴資穎(タイ・ツーイン)選手(チャイニーズタイペイ)にストレート勝ちしましたが、アジア大会で勝った時より攻撃的になっていましたね。

「自分のいいスタイルの出し方も少しずつ覚えてきて、どうしたら自分が有利に動けるかその時々で相手を見ながら『今日はこういう崩し方をしたほうが有効だな』とか、考えられるようになりました。その意味であの試合はアジア大会より攻めた方がいいと思い、ラリーをするよりも積極的に打っていきました。あの試合が始まる時点では奥原さんの1回戦敗退で私の五輪代表は決まっていたけど、1年間のレースと考えた時にいい締めくくりにしたいと思っていました。いい1年だったと思えるように最後の最後まで戦おうと思っていたので、気を抜くことなく戦えたと思います。世界のトップ5くらいまでの選手に勝つことは本当に難しいので、価値ある1勝でした」

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