早田ひなはパリで金メダルを獲るために「自分の卓球を変えた」 平野早矢香が中国のエース攻略法も考察 (2ページ目)
――対戦相手によって臨機応変に戦術を変えられるようになり、戦術転換のタイミングも早くなりましたね。
「そう思います。去年12月のWTT女子ファイナルズ名古屋で陳夢選手にフルゲームで負けた時よりも、世界選手権で陳夢選手に勝った時のほうが攻守のバランスがよく見えました。戦術的には"攻め"に寄っていて、相手に応じて自分の卓球の形ができていたと思います。
特に印象に残ったのはサーブの選択でした。早田選手は勝負所で高いトスを上げることが多いんですが、逆に低いトスを出して陳夢選手のレシーブのタイミングを崩す場面がありました。もともと早田選手は、効いている戦術を徹底的にやり通すタイプ。しかし今は、一手早くサーブのコースや長さ、回転を変えて、相手の読みや待ちを外して有利に試合を進めることができていますね」
【世界女王・孫穎莎を崩す秘策は「ハッタリの一球」】
――世界ランキング1位、中国の孫穎莎選手は手がつけられない強さです。彼女の強さはどこにあると思いますか?
「多くの中国の選手は勝負所で、安定と攻撃のギリギリのラインで攻めてくるイメージがあります。『ミスしてもいいから打つ』のではなく、『絶対にミスしないボールで一番厳しいコースを狙う』という感じです。
でも、孫穎莎選手はちょっと違って、リスクを冒してでも攻めてくるタイプです。世界選手権の1番で張本美和選手と当たった時、試合の序盤すごいチキータを一発打ってきました。中国の選手たちは国として"絶対に負けられない"という重圧を背負っている中でそんなプレーができるわけですから、孫穎莎選手のメンタルの強さはちょっと違うなと感じます」
――技術面ではどうでしょう?
「まず、サーブがほかの中国選手と比べてうまいですね。今回の世界選手権でもサーブのスイングスピードが速くて、低くてなおかつ回転がものすごくかかっています。張本選手は以前、孫穎莎選手のサーブについて『回転の種類はわかるけど、思ったより回転が強くてレシーブミスしてしまう』と話していました。
それと今回思ったのは、『サーブを出した後のモーションも工夫しているな』ということ。フォローのところでラケットの角度を見せないようにしていて、早田選手や張本選手はちょっと誤魔化されたというか、本来ならしないようなレシーブミスをしていた印象です。サーブを打つ時の3球目、5球目までの両ハンドの攻撃力も高いので、サーブを受ける側には『レシーブを厳しく入れないといけない』というプレッシャーがかかります」
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