早田ひなはパリで金メダルを獲るために「自分の卓球を変えた」 平野早矢香が中国のエース攻略法も考察 (3ページ目)
――体の使い方も抜群ですよね。
「これも彼女の特長のひとつですが、ミドル処理のうまさにそれが表われていますね。通常、ミドルにきたボールは体勢が窮屈になり、返球のコースがある程度限定されるんですけど、孫穎莎選手の場合は『そこからこのコースに?』というコースに打てるんです。
相手のミドルに持っていくメリットは、その1本でミスをさせる以外に、角度が出にくくて返球が甘くなったり、コースが限定されたりして計算しやすい点にある。それなのに彼女は、基本動作にこだわらず臨機応変な打ち方ができます。彼女の特徴は、フォアミドルからストレートにいいボールを打てること。自然な動きから威力のあるボールが打てるのは本当にすごいです」
――とにかく孫穎莎選手を崩さないことには中国の壁を越えられません。攻略法はありますか?
「まずはレシーブがカギですね。彼女のサーブは基本的に順回転なので、それに対するレシーブ対策を徹底する必要があります。私が有効かもしれないと考えているのは『ハッタリの一球』です。軸になるレシーブはストップやチキータですが、いきなりフリックを一発入れるとか。試合で1本しか使わないけど相手の印象に残る1本、相手の目線をズラす意味でのトリッキーな1本を戦術として使えるといいと思います。
あとは、相手を前後に動かしたいですね」
――具体的に教えていただけますか?
「今年1月に行なわれたWTTスターコンテンダー・ドーハの女子シングルス準々決勝で、早田選手が孫穎莎選手にゲームカウント2-3のフルゲームで負けた試合がありました。あの時、フリックではないですが、早田選手が台上のボールを上回転にしてポンとラケットに当て、相手コートの浅めに落とすレシーブをしたんです。普通はあまりやらない打ち方なので、孫穎莎選手が一瞬『あれ?』という感じで動きが遅れました。
そのボールは、回転をしっかり理解していないと打てないので、ちょっと難しいんです。孫穎莎選手は左右だけじゃなく前後にも揺さぶらないと崩せないので、早田選手が使ったような意外性のあるレシーブの引き出しが何パターンか必要だと思います」
(後編:打倒・中国の戦術 早田ひなのダブルス起用、「異質ラバー」を使う伏兵対策も必要>>)
■平野早矢香(ひらの・さやか)
1985年3月24日生まれ。栃木県出身。全日本選手権のシングルスを2007年度から3連覇するなど、通算5度の優勝を達成。2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪に出場し、ロンドン五輪の団体戦で日本卓球史上初の銀メダル獲得に貢献した。2016年4月に現役を引退後は、後輩の指導をはじめ、講習会や解説など卓球の普及活動にも取り組んでいる。
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