近江佑璃夏、フルタイムで働く日本女子フラッグフットボールの第一人者 競技の魅力は「戦略があれば男子チームにも勝てる」 (3ページ目)
【戦略があれば男女問わず勝負できる】
――フラッグフットボールはアメリカンフットボールから派生してできた競技なので当然、似ているところはたくさんありますが、違うところもあるかと思います。近江さんから見てフラッグフットボールの魅力はどういったところにあると考えていますか?
「戦略を立ててプレーを考えながら体を動かすところです。ここはアメフトと一緒だとは思いますが、ほかのスポーツにはなかなかないので、そこが一番の魅力です。
また、老若男女を問わず一緒にプレーができるところです。私も母と試合に出たことがありますし、今もブルーローゼスの練習試合は男性チームを相手にすることもあって、勝つこともあります。戦略があれば男女を問わずに勝負できるスポーツというのはなかなかないと思うので、大きな魅力だなと思っています」
――アメフトにしてもフラッグフットボールにしても「ルールが複雑そうだ」と敬遠されているところがありますよね。
「そうですね。確かにルールは難しそうだと、めっちゃ、言われます。でもルールは、野球などよりも簡単と、私は思っています。前に進むだけですし、馴染みがないだけでちょっと知ったら多分、すぐに理解できるのではないでしょうか」
――近江さんは世界一のワイドレシーバーになりたいとおっしゃっています。となれば、海外リーグへの挑戦なども考えていますか?
「はい。今年、アメリカでトライアウトがあると思うのでチャレンジしてみたいなと思っています。そこで生き残れなかったとしても、まだまだだなということがわかりますし、アメリカで活動していきたいです」
――ご自身のレシーバーとしての長所はどこにあると考えていますか?
「一番はキャッチ力と思っています。チアリーディングをやっていたことや今、ピラティスをやっていることもあって結構、柔軟性や(肩甲骨や肩の)可動域の広さには自信があるので、ロングボールとか逆リードのボール(進行方向の逆に飛んでくるパス)など、キャッチの範囲は広いかなと思っています」
――アメリカでトライアウトを受けるということは、十分通用する実力があるとご自身で感じているからですか?
「いえ、今はまだありません。やっぱり向こうの選手たちはスピードが速いですし、ここから基礎能力を上げていかないといけないなと思っています。ただブレーク(走る方向を急に変えること)やフェイク、そうした技術を使っての1対1の駆け引きなどでは戦えるかなと思っています」
――近江選手はバスケットボールをプレーしていたとのことですが、その経験はフラッグフットボールにも生きていると感じますか?
「ワイドレシーバーとして、ボールをキャッチすることやカットを踏む動きに生きていると感じます。バスケでもフェイクを使ってカットを踏んでいたので、動きとしては全身を使うスポーツという意味で似ていると思っています」
――練習や試合をする場所の日本における環境はいかがですか?
「まだまだ代表の練習でも河川敷でやったりしているのですが、大学のグラウンドを借りられたり、人工芝のグラウンドで練習できる機会は少しずつ増えてきています。とはいえ毎回できるわけではありません。フラッグフットボール専用の施設というものがないので、そこは今後も課題になってくると思います」
――近江選手が作ったブルーローゼスは運営等を近江さんが一手に引き受けているのですか?
「コーチは男子代表の方に来ていただいているのですが、運営のほうは所属選手が12人とそんなに大きなチームではないので、練習や練習試合を組んだりとかは自分がやっています」
後編「日本代表の江佑璃夏が描くフラッグフットボールの未来」に続く
【Profile】近江佑璃夏(おうみ・ゆりか)/1999年、大阪府大阪市生まれ。元社会人チームでプレーした父や、社会人Xリーグ・IBMビッグブルーに所属するプロ選手の兄・近江克仁を持つ「アメリカンフットボール一家」に育ち、さまざまなスポーツを経験しながら立命館大学では応援団チアリーディング部に所属していたが、カナダ留学中に本格的にフラッグフットボールを開始。現在、自身が代表を務めるチーム「Blue Roses(ブルーローゼス)」や日本代表で活動。2023年のアジア・オセアニア選手権に出場し優勝メンバーとなった。一般企業の営業職社員としてフルタイムで勤務に当たっている。
著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。
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