新たな日本女子卓球の「顔」へ。「みうみま」を破った「Wみゆう」が五輪選考会で見せた進化 (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

早田に続く"豪腕サウスポー"が開花

 もともと国際大会では常に上位に食い込む実力を持っている長崎と木原だが、今大会でさらなる進化を感じさせた。

ダブルスではすでに世界で結果を残している長崎(左)と木原 photo by Kyodo Newsダブルスではすでに世界で結果を残している長崎(左)と木原 photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る 準々決勝で、東京五輪金メダリストの伊藤と対決した長﨑は、2−2と接戦で迎えた第5ゲーム、伊藤が積極的に両ハンドドライブで攻めに出るも、ことごとく打ち返し主導権を握らせない。逆に攻撃にリズムが生まれてきた長﨑が、持ち前の力強い両ハンドドライブで左右のコーナーを打ち抜き、一気に流れを引き寄せた。

 続く第6ゲームも制して大金星。平野、早田を含め"黄金世代"と呼ばれる伊藤への勝利について、「その3人は昔から強くて、私は2歳しか違わないのに、『なんでこんなに差があるんだろう』って思うときもあった」という。それでも「自分でもやればできると思って、その先輩たちに挑戦するのが楽しい」と充実感をにじませた。

 一方、敗戦した伊藤は「思い切って向かっていってるけど、その感じも伝わらない」と話すように、バックハンドやレシーブのミスが増え、がっくりとうなだれるシーンが多く見られた。試合後には「どうやって点数を取ったらいいかわからなかった。思考停止。自分の中でも笑えちゃう。不思議すぎて、初めての感覚」と本音を吐露。国内で戦い続けるモチベーション維持の難しさも、少なからず影響していたという。

 とはいえ、伊藤は誰もが認める日本の絶対的エース。そんな彼女に黒星をつけた自信と経験は、長﨑にとって、間違いなく次のステージへとつながっていくだろう。それを表すかのように、同じ日本生命に所属する先輩・早田との決勝でも、3−0と先に王手をかけた。そこから大逆転を許したが、昨年の東京五輪明けから絶好調の"豪腕サウスポー"と大接戦を繰り広げた。

 早田にも引けを取らないパワフルな両ハンドドライブと、国内屈指の威力あるチキータが魅力の長崎。20歳を迎える今年、次代を担う"左の大砲"がついに花開く。

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