卓球界のレジェンド松下浩二。
プロリーグ構想の原点は30年前にあった

  • 城島充●文 text by Jojima Mitsuru

【Tリーグチェアマン 松下浩二インタビュー 前編】

「打倒中国を果たすためには、日本国内にプロリーグを作って全体的なレベルを上げる必要があるとずっと思っていました。でも、僕の夢はそれだけじゃないんです」

 10月24日に開幕する卓球リーグ「Tリーグ」のチェアマンを務める松下浩二は、抱き続けてきた思いを静かな口調で語り始めた。日本の卓球界が歴史的な一歩を踏み出すまでの道のりは、カットマンとして一時代を築いた松下の個人的な情熱と深く、強く結びついている。

 現在は男女とも若い才能が国際舞台で活躍し、2020年の東京五輪に向けて卓球人気が盛り上がるなか、Tリーグはどんな未来図を描いていくのか。インタビュー前編では、卓球界の先駆者が"世界最高峰のプロリーグ"を着想した原点を探ってみた。

1993年に日本人初のプロ卓球選手になった松下氏 photo by Tsukida Jun /AFLO SPORTS1993年に日本人初のプロ卓球選手になった松下氏 photo by Tsukida Jun /AFLO SPORTS「僕は僕にしかできないことに挑戦し続けたい」

――松下さんはずいぶん前から、日本での卓球プロリーグ実現を提言してきました。頭の中にその思いが芽生えたのはいつ、どんなきっかけがあったのですか。

「大学3年のときのことです。小学生の頃からずっと卓球を続けてきて、世界選手権にも出場しましたが、当時の僕は卓球に対するモチベーションを失いかけていました。大学3年ですから、当然、将来のことを考えますよね。でも、当時の大学のトップ選手たちには選択肢がひとつしかありませんでした。多くの先輩たちもそうであったように、卓球部のある企業に就職して、仕事をしながら卓球を続ける道です。

 僕は文武両道というか、『卓球しかできない人間になるな』と教えられてきましたから、就職すれば仕事の面でも頑張ろうと思っていました。だから、3年生になって就職先が内定すると、もう頭がそっちに切り替わりそうになったんです。そんなとき、スウェーデンリーグのファルケンベリというチームでプレーしないかという話があって、当時からお世話になっていた卓球王国編集長の今野昇さんから『まだまだ強くなれるから、絶対に行ったほうがいい』と背中を押されたんです」

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